【プロ野球】開幕1カ月で見えたエースたちの明暗

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨年、沢村賞の楽天・田中将大は腰の張りにより登録を抹消された昨年、沢村賞の楽天・田中将大は腰の張りにより登録を抹消された 開幕から1カ月が経ち、好調のチームと波に乗れないチームがはっきりしてきた感じだが、その分かれ目になっているのはエースの好不調だ。特にパ・リーグはエースの出来がそのままチーム成績に現れている。

 楽天、オリックス、西武の下位の3チームは、いずれもエースが戦列を離れてしまった(成績、数字はすべて4月30日現在のもの)。

 昨年、沢村賞に輝いた楽天の田中将大は、腰の不調で登録抹消。ダルビッシュ有が去り、日本のエースとして期待され田中だったが、腰の不調はキャンプ中からあった。しかし、岩隈久志が抜けたあと、手薄になった楽天の投手陣を支えなければという使命感から無理をしてしまったようだ。現在も十分な走り込みができず、実戦のマウンドからも遠ざかっているため、復帰にはしばらく時間がかかる。他のどのチームよりもエースへの依存度が高いチームだけに、星野仙一監督も頭の痛いところだ。

 離脱の理由がはっきりしている田中よりも、むしろ深刻なのは西武の涌井秀章かもしれない。4年連続開幕投手に指名されながら、開幕から3連敗を喫するなど、状態が一向に上がらず、ついにファーム落ちを言い渡されてしまった。

「何回か登板を飛ばせばよくなるという状態ではない。一から作り直すつもりでやらないと......」

 迷宮に入り込んだエースに、渡辺久信監督は対症療法ではなく根本からの手術を選択させた。涌井が昨シーズンから本来の投球を失ってしまったのは、統一球への対応がうまくいかなかったからという声がある。だとすると、ボールの握り方、投球フォームなど、投手の根本にかかわる見直しが求められる。それだけに復帰時期の見通しは立っていない。エース不在の戦いが長引けば、西武にとってはますます厳しい戦いを強いられることになる。

 オリックスのエース・金子千尋も開幕前に腰の張りを訴えて開幕投手をフィガロに譲るなど、ここまで一度も登板していない。ただ、長いシーズンを考えて無理をさせたくないという首脳陣の意向もあって、エース不在の状況とはいえ、まだチームに焦りは感じられない。むしろ金子復帰が、一気に攻勢に出るスイッチになる可能性も十分に考えられる。

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