【プロ野球】藤岡貴裕のピッチングを支える繊細な指先感覚
貴重な先発左腕だけに、1年目からローテーション入りの期待がかかる藤岡貴裕安倍昌彦の投魂受けて~第14回 藤岡貴裕(ロッテ)
1月28日。東洋大学・高橋昭雄監督の「就任40周年を祝う会」が、都内の某ホテルで催された。お祝いに駆けつけた400人あまりの関係者の中に、「高橋学校」から巣立っていったおよそ40人のプロ野球選手たちがいた。すでに球界を去ったOBも駆けつけて、高橋監督の人望の一端を垣間見たような気がした。OBたちに、「人望では監督以上」とささやかれる初江夫人の軽妙でいて、暖かいスピーチも交わり、笑いの絶えない集まりになった。
その会の途中、会場びっしりの人たちをかき分けるようにして、藤岡貴裕が来てくれた。
「よかったね、ロッテで」
「はい、いちばん最初にボクを決めてくれた球団だったので」
ロッテは成瀬善久と吉見祐治以外に一軍レベルの先発サウスポー候補がいない。したがって「ローテーション左腕」はここ数年、第一の補強ポイントになってきた。チームの総意として、昨年の年頭から「東洋大・藤岡1位」を正式なメッセージとして掲げ、藤岡が投げる日の神宮のネット裏前方には、彼の投球をじっと見守る東洋大出身の山下徳人スカウトの姿が必ずあった。
「これからが本当の勝負だね」
「ほんと、そうなんです。でも、どうなるんですかね......」
行く末の不安を口にする彼の表情が意外だったが、反面、その用心深さがあれば大丈夫。そんな確信も胸に湧いた。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。