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大谷翔平が生み出した二刀流の価値を「唯一無二」で終わらせてしまっていいのか? その魅力を未来に繋げることがMLBの責務 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【「二刀流選手」を増やすための一案】

 それから100年。野球史においてルースに勝るとも劣らぬ革命的な存在が現れた。大谷は分業化が進みすぎた野球に、予測不能性を取り戻している。ルースの時代、リーグは本塁打を打てる選手を増やそうとした。ならば今度は、二刀流に挑戦できる選手を増やすべきではないだろうか。

 私がコミッショナーなら、「二刀流枠」を新設する。各球団は通常の26人ロースターとは別に、二刀流で起用したい選手をひとり登録できる。その選手は投手枠にも野手枠にもカウントされない。

 目的は単純だ。30球団すべてに公平な機会を与え、球団が二刀流選手を試しても損をしない環境を作ることである。そして、その選手は大谷レベルである必要はない。95マイル(152.9キロ)を投げながら代打でも起用される選手。週に一度だけ登板する外野手。中継ぎとDHを兼任する選手。そんな選手が各球団にひとりいるだけで、野球は今よりずっと多様になる。

 制度が導入された瞬間から、球団のチーム作りも変わるだろう。ドラフト会議で球団は「うちの二刀流候補は誰だ」と考え、スカウトも探し始める。高校生も大学生も、「投手か野手か決めろ」ではなく、「二刀流枠を目指そう」と考えられる。もちろん、それで30人の大谷が生まれるわけではない。そんなことは期待していない。だが30球団が毎年ひとりずつ二刀流選手を試していけば、10年後には延べ300人近い二刀流経験者が誕生する。そのなかから、大谷に近いスターが現れる可能性は、現在よりはるかに高くなる。

 そして何より、これは競技面だけの話ではない。興行の話でもある。ファンは「今年最高の二刀流新人は誰か」を追いかける。エルドリッジのように打者に専念している選手についても、「来季は二刀流枠で再び投げさせるべきでは」という議論が生まれるだろう。今のまま「また大谷並みの才能ある選手を待とう」では、おそらく何も起きない。今必要なのは、次の二刀流スターが生まれやすい環境を作ることなのだ。

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