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「二刀流への疑問」を吹き飛ばした大谷翔平の「1試合3本塁打&10奪三振」 同僚も「彼はマイケル・ジョーダン」と感嘆 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「二刀流だから結果が出ない」という評価に......】

 そして10月17日の火山噴火の前、大谷は最も言われたくない批判を受け続けていた。「二刀流だから結果が出ない」という指摘である。今季公式戦中の登板日における打撃成績は54打数12安打(打率.222)、登板翌日は34打数5安打(.147)。さらに、デーブ・ロバーツ監督までもがこうコメントしていた。

「登板日は、体力を温存しようとして打席に集中できていないように見える。実際、登板した試合での打撃はよくない。今後はもっといいプランを考えたい」

 その発言について、10月15日の会見で大谷に質問が飛んだ。

「サンプル的に少ない。DHだけで臨んでいたシーズン(去年)と単純に比較はできない。もちろん、やらないよりやっているほうが体力的にはきつい。それはシーズン中も同じことなので、それが直接関係しているかどうかはわからない。体感的にはそうではないと思っています」と冷静に答えた。

 問題は、今年のポストシーズンで結果が出ていなかったことだった。その時点での成績は38打数6安打、17三振、打率.158。地区シリーズのフィラデルフィア・フィリーズ戦、そして優勝決定シリーズのミルウォーキー・ブルワーズ戦最初の3試合に限れば、29打数3安打(打率.103)、14三振と苦しんでいた。とはいえ、これはフィリーズとブルワーズが徹底して大谷を封じにかかった結果でもあった。30打席のうち実に20打席で左投手を当てるなど、綿密なマークを敷いていたのだ。

 それでもロバーツ監督は、数日前の会見で厳しい言葉を口にしていた。「(一番打者の大谷が)このままの調子ではワールドシリーズでは勝てない」。その発言についてどう感じたかと問われた大谷は、静かに、しかし含みを持たせて答えた。「逆に言えば、打てば勝てると思っているのかなと思うので、頑張りたいなと思っています」。

 大谷はすべての質問に紳士的に対応していた。だが内心では、はらわたが煮えくり返っていたのではないだろうか。

 長い野球の歴史を見れば、シーズンMVPを複数回受賞しているエリート選手でさえ、ポストシーズンで結果を残せず、「10月に打てない男」とレッテルを張られたケースは少なくない。実際、大谷は相手から敬遠され、ムーキー・ベッツら後続打者がチャンスを生かして勝利した試合も複数あった。貢献しているのだが、それでも世間は、17三振・打率.158という数字だけで彼を批判した。しかし会見での大谷は、あくまで冷静だった。

「思いどおりにいかなかった打席もありましたが、相手投手たちはほとんど失投をしませんでした。ポストシーズンにふさわしい素晴らしいピッチングだと思います」。さらに続けて、「投げるほうは、自分でコントロールできる範囲をしっかり管理すれば結果は出せると思っています。打つほうは、構えやメカニクスを含めて常に調整の途中段階です」と語った。

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