【MLB】佐々木朗希が中継ぎでのメジャー復帰濃厚 「期待外れの存在」から「ブルペンの救世主」となれるか (2ページ目)
【来年以降に生かすためにも中継ぎで全力を】
ただ、ブルペンに配置転換して迎えた過去2度の登板内容と結果は首脳陣に期待させるには十分なものがあった。今の佐々木はブルペンで結果を出そうと新しい役割を懸命に学んでいる。その姿から、復帰への意思と精神的な成長が感じられるのも事実である。
「チーム状況的には中継ぎを必要としている。"来年は先発"という前提でどっちがいいかという話をされて、別に何も強制はなかったですけど、特に今の時期、チーム状況的には中継ぎをやってくれればうれしいという感じで提案されました。今季、ポストシーズンも含めて経験できることだったり、投げられる現実的なところを考えて、中継ぎのほうがチームのためにもなる。自分としてもいろんな経験ができるのかなと思いました」
もちろんシーズン中の配置展開は簡単なことではない。ブルペンからの登板では、先発のようにじっくりと肩を温める時間はない。マウンドに立つまでのルーティンを大事にする佐々木は「中継ぎは難しい」と繰り返し述べ、「自分に適性があるとは思わない」とも述べている。
マイナーでの登板時はだいたい出番がいつ頃になるかは決まっていたが、メジャー復帰後はそうもいかない。回またぎ、回の途中からの登板は可能なのか。チーム状態次第で連投はできるのか。さまざまな意味で未知数であり、どの程度貢献できるのかを推測するのは容易ではない。
その一方で、佐々木の最大の武器である速球、スプリットというふたつの球種を1、2イニングで攻略するのは誰にとっても至難ではあるのだろう。準備の難しささえクリアすれば、ブルペンの貴重な武器になり得るかもしれない。
「シンプルに聞こえるかもしれないけれど、カギは100マイル(160キロ)以上の速球が投げられているかどうか。それだけの球速が出ていさえすれば、ロウキはそう簡単には打たれないよ」
MLB.comの分析担当であるデビッド・アドラー氏はそう語り、速球に勢いが戻れば活躍は可能と明言していた。
時を同じくして、ドジャースのブルペンは苦しんでいる。タナー・スコット、ブレイク・トライネンといったベテランたちは不調に悩み、チーム最大の弱点と目されるようになった。2年連続世界一に向け、チームがリリーフのテコ入れを必要としているまさにそのタイミングで佐々木は戻ってくる。
「(プレーオフのような)そういった環境でしか経験できないこともある。いろいろと吸収して来年につなげたい。少しでもチームに貢献できると思う」
そう意欲を語った背番号17はこの秋、どんなストーリーを紡いでいくのか。
佐々木がここまでドジャース入団時の期待に応えられていないのは誰も否定できない現実である。それでも特にニューヨーク、ロサンゼルスのような大都会のチームでは、最も重要な10月以降に活躍できればそれまでの停滞はほとんど帳消しになる。"期待外れの存在"から、"ブルペンの救世主"へ。
厳しかった1年の最後に、ポストシーズンでチームを救う佐々木の復活のシナリオがまもなくスタートする。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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