【大谷翔平】ドジャース打撃コーチが説明する「二刀流」のルーティンと打撃成績停滞の理由 (2ページ目)
【「あれも打てる、と思って振ってしまうこともあるのだろう」】
大谷について語ってくれたドジャースのベイツ打撃コーチ photo by Sugiura Daisuke プレーの結果は相手次第でもあり、「打てなかった=不調」と短絡的に考えるべきではないというベイツ打撃コーチの言葉はもちろん理解できる。それにしても最近の大谷にはやや疲れが見え、特に猛暑でのプレーが続いたシンシナティ、タンパベイでのゲームでは消耗も目についた。
7月29日のレッズ戦では自己6度目の1試合4三振。その試合後、ロバーツ監督は「完全に"振りにいくモード"に入ってしまっていた。彼が一番よい状態の時は、ボールをうまく捉えて、フィールド全体に打ち返しているのに」と大谷のアプローチに少々辛辣だった。
ベイツコーチも、「大谷は力みすぎるとストライクゾーンを広げてしまうことがあるのか」という問いに関しては否定しなかった。もっとも、この2年は大谷のスイングを間近で見守ってきた理論家は、シーズンを通じての成績が依然として優れていることを指摘。主砲への信頼を強調する姿が印象的でもあった。
「もちろん翔平でも、ボール球を追いかけてしまうことがあるのは事実だ。ただ。それはどの打者にもあること。ちょっと無理に打ちにいってしまい、ストライクゾーンから外れた球をスイングしてしまう。特に翔平の場合、もともと打てる球種が多いので、『あれも打てる』と思って振ってしまうこともあるのだろう。それがストライクではない場合、ヒットにできる確率は必然的に下がる。それゆえに、積極性とのバランスが難しくなる。
しかし、確かに今の翔平は絶好調ではないかもしれないが、それでも本塁打がコンスタントに出ていることが能力を物語っているという考え方もできる。今季の打率は去年よりは低いかもしれないが、それでも長打は打っているし、本塁打も出ている。どんな打者でも毎年、成績に違いはある。エンゼルス時代も年によって打率が違ったり、本塁打の本数が違ったりしていた。でもOPS(出塁率+長打率)や総合的な生産性では、常に非常に高い水準にある。今年もそれは同じであり、それこそが翔平がどれほど特別な打者かを示しているのだろう」
ベイツの言葉どおり、どちらかといえば低調な時期でも本塁打が安定したペースで飛び出し、貢献度を保てるのが大谷らしさに違いない。三振の増加、それが始まったのが投手としての復帰時期にかぶっているのはやはり気がかりだが、スランプ自体はあることだ。「50-50」(50本塁打・50盗塁以上)という金字塔を打ち立てた2024年にしても実は8月は打率.235、OPS.886に終わっていたが、9月に打率.393、OPS1.125と鮮やかに復調している。
二刀流復活1年目の今季、終盤戦の大谷はどんな軌跡を辿っていくのか。投球再開によって不確定要素が増えたからこそ、余計に興味深い戦いが続いていきそうだ。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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