「なおエ」の懸念もあるなか、覚醒予感の菊池雄星はエンゼルスを11年ぶりのポストシーズンに導けるか (2ページ目)
【2025年の新たな武器はスイーパー】
2024年のスタッツは、夏のトレードでブルージェイズからアストロズへ移ってから大きく向上している。移籍前の115.2イニングと移籍後の60.0イニングを比べると、奪三振率が10.12→11.40、与四球率が2.33→2.10、防御率は4.75→2.70だ。アストロズではエース級の投球を披露した。
サンプル数は多くないものの、菊地の好調さは一時的なものではなく、完全開花の兆しに見える。移籍後のFIP3.07ほどではないものの、移籍前のFIPも3.66。防御率より1点以上も低かった。
FIPとは「フィールディング・インディペンデント・ピッチング」の略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。対戦結果のうち、三振、四球と死球、ホームランは基本的に投手の責任だが、ホームランを除くインプレーの打球の結果は守備に左右されることが少なくない──という考え方から生まれた。
菊池を高く評価しているのは、エンゼルスだけではない。思い出してほしい。アストロズはFAになるまで数カ月しか保有できない菊池を獲得するのに、若手を3人も手放した。今オフに争奪戦が起きなかったのは、12月を迎える前にエンゼルスと契約を交わしたことが理由だろう。
2025年の菊池の投球は、さらに進化する可能性がある。スタットキャストで2024年の投球割合を見ると、ブルージェイズで投げた最初の4カ月はスライダーが20%未満だったのに対し、アストロズでは35%以上に増えた。9月に限るとスライダーの割合は39.2%を占め、フォーシームを上回っている。
さらに2025年は、通常のスライダーよりも横に大きく動く「スイーパー」が加わりそうだ。大谷翔平(当時エンゼルス/現ロサンゼルス・ドジャース)は2年前、この球種でマイク・トラウトから空振りを奪い、WBC優勝を決めた。
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