菅野智之メジャー成功へのカギは「コマンド」 いきなりエースとなる可能性も (3ページ目)
【菅野が操る多彩な球種は大きな武器】
菅野の予測防御率が高い理由のひとつには、奪三振率の低さがあるのではないだろうか。菅野の奪三振率は、過去3シーズンとも6.40を下回っている。
たとえば、2024年にメジャーリーグで150イニング以上を記録した71人中、奪三振率6.50未満はふたりしかいない。奪三振率6.33のオースティン・ゴンバー(コロラド・ロッキーズ)は防御率4.75、奪三振率6.40のマイルズ・マイコラス(セントルイス・カージナルス)は防御率5.35だった。
もっとも、菅野の成績が予測どおりになるとは限らない。予測を裏切り、好投するためのカギを握るのは制球、それも「コマンド」だろう。
コマンドというのは、コントロールよりも精度の高い制球を指す。日本流に言えば、「ピンポイントのコントロール」が最も近い表現のような気がする。
コントロールにとどまらず、菅野がコマンドも持ち合わせていることは、すでに日本プロ野球で証明している。練習で初めて菅野の球を受けた際の捕手アドリー・ラッチマンの絶賛には多少のリップ・サービスも含まれているのかもしれないが、菅野は使用球の違いも問題にはしていないようだ。2月26日のエキシビションゲーム初登板はゲリー・サンチェスとバッテリーを組み、2イニングを投げて得点を許さなかった。
奪三振に関しても、率はともかく、必要な場面で三振を奪うことはできるのではないだろうか。菅野が操る多彩な球種のなかには、現在メジャーで人気のスプリッターも含まれている。奪三振率がNPB時代を超えることもあり得るだろう。2024年のリーグ全体の奪三振率は、日本プロ野球が7.01、メジャーリーグは8.60だった。これは、それぞれの打者が三振をどう考えるかの違いにも見える。
さらに菅野には、エースとなる可能性もある。今のところ、オリオールズにエースは不在だ。
ミルウォーキー・ブルワーズ時代の2021年にサイ・ヤング賞を受賞し、2024年のオリオールズ初年度にア・リーグ4位の防御率2.92を記録したコービン・バーンズは、このオフにFAとなって6年2億1000万ドルの契約でアリゾナ・ダイヤモンドバックスに去っていった。
それに対し、オリオールズが手に入れた先発投手はふたり。菅野に続き、41歳のモートンと1年1500万ドルの契約を交わした。
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