ワールドシリーズ展望 大谷翔平vs.ジャッジ 最高勝率チーム激突のドジャース対ヤンキースは完璧なシナリオ (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【周囲からの厳しい指摘に対する大谷とジャッジの答えは?】

 果たして大谷とジャッジは、膨らむ期待のなか、最高の舞台でその実力を存分に発揮できるのか? 

 大谷はサンディエゴ・パドレスとの地区シリーズで打率2割、1本塁打、OPS.623と低調だったため、メッツとの優勝決定シリーズ中に「バリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲス、ジャッジといった選手は公式戦では結果を残したが、ポストシーズンでは打てず苦しんだ。自分にプレッシャーをかけすぎていると思うか」と質問を受けた。

 それに対し大谷は、こう答えている。

「どうなんですかね。そういう選手たちと自分がまず一緒かどうかわからないですし、僕は初めてのポストシーズンで、多く語ることはないですけど......。当然、相手の投手もそのチームのなかでトップクラスで、チーム自体もリーグのなかでトップクラス。それだけレベルが高い投手から安打、本塁打を勝ち取っていくのは難しい。なおかつそういう打者は、必ず一番ケア(警戒)されるポジションにいますし、難しいとは思う。

 僕は今年が初めてなので、今のところは自分のやれることを精一杯やりたいなという気持ちです」

 そして優勝決定シリーズでは6試合で打率.364、2本塁打、OPS1.184と盛り返して見せた。

 一方でジャッジは2017年から2024年まで、1シーズンを除いて7度ポストシーズンに進出。53試合で打率.203、15本塁打、31打点、OPSは.761と結果は芳しくない。今年もここまで31打数5安打、打率.161だ。クリーブランド・ガーディアンズとのア・リーグ優勝決定シリーズでは、厳しい質問が飛んだ。

 それに対して、ジャッジは次のように説明している。

「毎年公式戦の162試合をプレーし、打撃で浮き沈みを経験するなかで、よい時を維持し続けることはできないと学んだ。打つことは難しいし、ゆえにいつも謙虚にさせられる。すべての瞬間を大切にし、できることをする。

 悪い結果を引きずらないことが重要。試合に負け、4打数0安打だったとしても、次の打席や次の試合に持ち越さない。逆にホームランを打っても、その瞬間は終わったことなので、次に集中する。ヤンキースタジアムでブーイングを受けたことはたくさんあるし、ここでプレーした多くのレジェンドたちもブーイングを受けた。そこは気にしない。ファンはチームが勝ち、選手が活躍するのを見たいが、私がコントロールできるのは、打席での自分の行動だけだ」

 ジャッジは、ヤンキースのキャプテンだ。ちなみに前キャプテン、デレク・ジーターはポストシーズンに強いと賞賛され、7度のワールドシリーズで38試合にプレーし、打率.321、3本塁打、OPSは.832だった。ジャッジはすでにMLB史に名を残す強打者だが、もしワールドシリーズでもその実力を発揮すれば、彼の歴史的評価は一層高まり、ジーターに勝るとも劣らぬ存在となるだろう。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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