ワールドシリーズ展望 大谷翔平vs.ジャッジ 最高勝率チーム激突のドジャース対ヤンキースは完璧なシナリオ (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「夢の対決」と呼べる理由】

 もっとも、こういった過去のMVP対決と比べても、大谷とジャッジの顔合せは別格だ。今のメジャーリーグで、実力・人気ともにこのふたりに匹敵する選手はいない。ジャッジはOPS(出塁率+長打率)で1.159を記録しMLB全体で1位、大谷は1.036で2位だったし、本塁打で50本の大台に乗せたのもこのふたりだけだった。さらに打点も130を超え、他を圧倒した。大谷は2023年と2024年に最もユニフォームが売れた選手であり、ジャッジも2017年から2019年までトップを独占し、今年も3位にランクイン。このふたりが人気と実力でリーグを支配していると見なしてもいい。

 野手同士のこれほどのスター対決となると、1962年のジャイアンツのウィリー・メイズ対ヤンキースのミッキー・マントルまでさかのぼる必要があるのかもしれない。その年、メイズは49本塁打、データサイト『ファングラフス』のWAR(Wins Above Replacement/容易に獲得可能な代替選手=Replacementに比べて、どれだけ勝利数を上積みしたかを統計的に推計した指標)で計算すると10.5になるが、6本塁打、WAR5.3のモーリー・ウィルス(ドジャース)にMVPを奪われていた。ウィルスが104盗塁を記録し、盗塁でMLB史上初めて3ケタに達していたからだ。一方、マントルは30本塁打、OPS1.091を叩き出し、3度目のMVPに輝いた。

 それでもふたりが1950年代半ばから球界の最大のスターであったことに疑いはなく、名門球団の看板選手同士のワールドシリーズ対決は特別だった。マントルのヤンキースが4勝3敗でシリーズを制している。

 加えて、ドジャース対ヤンキースの対戦は、野球界最大のブランド同士の顔合わせと言っても過言ではない。アメリカを代表する2大都市、ロサンゼルスとニューヨークのチームであり、世界的にも知名度が高く、圧倒的なファンベースを誇る。

 1941年から1981年の41シーズンの間にワールドシリーズで11回も対戦し、特に1978年の対戦はアメリカで4430万人の視聴者を記録、史上最多となった。81年のシリーズも4140万人が視聴し、歴代3位である。そしてそれ以降の42シーズンで、この2強が相まみえることはなかった。近年、ワールドシリーズのテレビ視聴者数は減少しており、過去22年間で最も多かったのは2004年のボストン・レッドソックス対セントルイス・カージナルスで1580万人にとどまった。MLBの人気復活を願う多くの関係者が、この夢の対決の再来を待ち望んでいたのである。

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