山本由伸らドジャース投手陣戦力分析 手術から復帰組のカムバックプロセスは大谷翔平の参考になる (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【ドジャースは投手の再生工場】

 実はドジャースは再生工場として名高いチームでもある。

 例えば現在、クローザーを務めるエバン・フィリップスは、ボルティモア・オリオールズ時代は防御率7.36だったが、ドジャースに移籍後、コーチから「スライダーの握りを変えスピン量を増やし、もっと横滑りするように」と指導を受け、これが最大の武器・スイーパーとなった。2023年は全投球の45%がスイーパーで被打率.111、空振り率42.1%の魔球となった。

 元広島のライアン・ブレイジアも2023年はボストン・レッドソックスで防御率7.29と奮わず、5月に解雇された。しかし6月、ドジャースに移籍すると、フォーシームとスライダーの投手だったブレイジアは、コーチから対左打者用にカッターも投げるべきと提案を受け、それがハマってドジャースでは39試合で防御率0.70をマーク、シーズン終盤はセットアッパーを任された。

 フリードマンの持論は「選手は正しい環境に身を置けば、一番良い結果を出せる」というもの。コーチ、アナリスト、スカウト、医療&トレーニング担当、多くの関係者が協力し知恵を出し合い、その選手が成功できるよう最適な環境を用意する。「大事なのはスタッフみんなが同じ方向を向いていること」と言う。

 このサポートシステムを生かし、グラスノーもさらに上のレベルの投手に進化させる。フリードマンは「調査にたくさんの時間を費やした。過去のケガは肘に基づくもので、それは(2021年の)手術で治っている。練習熱心だし、今後の数年間は我々のために大きな役割を担う」と期待する。

 先発4番手に予定される左腕ジェームス・パクストンの復調も再生プロジェクトの一環だ。ヤンキース時代の2019年に29試合に先発して15勝6敗の好成績をあげた。しかしながら通算11年のメジャーキャリアで12度も負傷者リストに入っている。2020年から2022年はわずか6試合の先発で1勝1敗だった。2023年は復活し、レッドソックスで19試合に先発し7勝5敗。それでも春のオープン戦で太もも裏を痛め4月は投げられなかったし、9月10日に右ひざの炎症で負傷者リストに入りシーズンを終えた。それでもこのオフ、バクストンを獲得したのは5月から7月の7試合で42イニングを投げ、45三振を奪い、防御率1.93と相手を圧倒した時期があったからだ。直球とカーブとカッターのコンビネーションが優れていた。ドジャースのシステムなら昨季の圧倒できた時期をシーズン通して続けさせられるかもしれない。

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