検索

大谷翔平のメディア対応をロバーツ監督が重視するワケ バリー・ボンズと同僚だった現役時代の経験

  • 取材・文●奥田秀樹 text by Okuda Hideki

キャンプでは高い頻度で会見に応じている大谷翔平 photo by Kyodo Newsキャンプでは高い頻度で会見に応じている大谷翔平 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る

大谷翔平の新たな旅〜後編〜

大谷翔平が、新天地ロサンゼルス・ドジャースでのスタートを切った。近年も含めMLBでは史上最大規模の高額契約選手の存在がチームの成功にそのまま直結する例は決して多くはないが、大谷を迎え入れたドジャースは、チームとしての成功を妨げるような負の要素が極めて低い環境にある。それゆえに、大黒柱の大谷がメディア対応を含めてどのような振る舞いを見せるのか。「7億ドルの男」としての存在は、グラウンド上のパフォーマンス以外の部分も含めて評価される。

【昨季王者のレンジャーズに見る勝利へのカギ】

 戦力的な備えは十分のドジャースだが、実際に勝つためには、何が必要なのか。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「チームをひとつにすること」と話す。

 2023年、ニューヨーク・メッツはオフシーズンの勝者と呼ばれ、開幕時のチームのサラリー総額がMLB史上最高の3億5000万ドル(約525億円/1ドル=150円換算 以下同)だったが、結果は公式戦75勝87敗の負け越しでポストシーズンに進めなかった。一方でレンジャーズは2年続けての高額投資で2億5000万ドル(約375億円)、公式戦は前年より勝ち星を22個増やし、ポストシーズンを勝ち上がって、初の世界一に輝いた。

 何が違ったのか? レンジャーズ担当のべテラン記者ジェフ・ウィルソンはこう分析した。

「重要なのは、チームの団結力だと思う。ドジャースも期待が大きいだけに、シーズンが始まり連敗が続いたりするとロバーツ監督の采配が悪いからクビにしろと騒ぎ立てられるだろうし、大谷がスランプに陥り、山本が打ち込まれると、金の払い過ぎだと批判される。

 そんな周囲からの雑音に潰されたのがメッツだった。前年に公式戦101勝(61敗)で大きな期待が寄せられていたが、春先のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で守護神のエドウィン・ディアスがケガをし、大エースのジャスティン・バーランダーもケガで出遅れ、マックス・シャーザーも不振。スティーブ・コーエンオーナーが編成本部長を解任するのではとの憶測も出て、チームは落ち着かないままだった。

 一方でレンジャーズは2021年に102敗(60勝)、2022年に94敗(68勝)のチームだったため、シーズン当初から大して期待されていなかった。だが、3度世界一経験がある新任のブルース・ボウチー監督は、選手を管理するのではなく、のびのびプレーさせた。そして選手たちは球場を離れてもみんなでゴルフをしたり食事会を開いたり、日々絆を強めていった。長いシーズンを戦う上で重要なことで、後半戦苦しい時期もあったが、団結力で乗り越えられたんだと思う」

 大谷も12月の入団会見で「一番大事なのは全員が同じ方向を向いていること」と話したように、チーム一丸となる重要性は認識している。キャンプ初日、「1年目のつもりで、まずは環境とチームメイトに慣れることが最優先」と語り、新しい仲間とのコミュニケーションについても「自ら行きますね、基本的には。いろんな人に挨拶するので、2回目の挨拶に行かないように、一発目で覚えられるように。もし行った時は勘弁してほしい」とユーモアを交えて説明した。

1 / 2

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

【写真】すでに懐かしい? 大谷翔平 RED SHOW TIME!

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る