大谷翔平の価値をドジャースは最大限プラスにできるか 23年前の高額契約のA・ロッドと比較 (2ページ目)
【重圧に道を誤ったA・ロッド】
確かにこの契約でMLBのトップスター「大谷翔平」の知名度はさらに上がった。近年のMLBの最も大きな課題のひとつは、国中にあまねくファンを持つ看板スターが不在であることだった。
スポーツビジネスのウェブサイト『スポルティコ』によると、広告、スポンサー料など副収入で、2023年にトップだったアスリートはNBAのレブロン・ジェームスで稼いだ額は8000万ドル(約120億円)。これに続くのはゴルフのタイガー・ウッズ、サッカーのリオネル・メッシで6500万ドル(約97億5000万円)。その後はサッカーのクリスティアーノ・ロナウドの6000万ドル(約90億円)、NBAのステフィン・カリーの5000万ドル(約75億円)、ヤニス・アデトクンボの4500万ドル(約67億5000万円)、ケビン・デュラントの4200万ドル(約63億円)、そしてゴルフのローリー・マキロイと大谷で4000万ドル(約60億円)だった。
このあともプロフットボールNFLやNBAの選手が続き、次に野球の選手が出てくるのはかなり後で、ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)が700万ドル(約10億500万円)、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)が500万ドル(約7億5000万円)、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が400万ドル(約6億円)である。ケタがひとつ違う。大谷の4000万ドルも日本市場からのものが少なくなかっただろう。
だがいま、大谷は史上最大の契約を勝ち取り、優勝候補筆頭のドジャースの牽引車となった。人気の高騰ぶりは2月3日、本拠地・ドジャースタジアムで行なわれたファンイベント「ドジャーファンフェスタ2024」で明らかだった。入場券3万5000枚は完売。大谷は外野のセンター付近に設けられたステージに大トリで登場、「(エンゼルス時代の)赤とは真逆(の青のチームカラー)。ようやく来たなと実感している」と挨拶、晴れやかな笑顔に大歓声が湧き起こった。人気はまさにハリウッドスター級だ。
どんな話題でも大谷が口を開くたびに会場が盛り上がった。背番号「17」を譲渡してくれたチームメートの奥さんに「お礼」としてポルシェを贈呈したこと、愛犬・デコピンのこと、好きな食べ物、ビデオゲーム。そして「ワールドシリーズ優勝。そこだけを目指している。(ファンと)シーズンを一緒に戦っていけたら最高」と締めくくった。
とはいえ、史上最大の契約がその後の成功を保証してくれるとは限らない。歴史が示すように、時に悲しい結末を迎えることもある。
レンジャーズに入ったロドリゲスは期待どおりに打ちまくり、MVP投票で移籍1年目から6位、2位、1位になる活躍を見せた。だが、チームは投手陣が弱点で3年連続地区最下位。レンジャーズはロドリゲスの高額年俸が足かせになり、投手を補強できなかった。結局、ロドリゲスは2004年にヤンキースにトレードされてしまう。その上、ロドリゲスは2009年、スポーツ専門放送局『ESPN』のインタビューでレンジャーズ時代の3年間、ステロイド剤を使用していたことを認め、謝罪した。史上最高額の契約に見合うことを証明しなくてはならないという重圧を感じていたという。
ロドリゲスは野球人気を押し上げる看板スターになるどころか、当時MLBを震撼させた薬物スキャンダルの渦中の人物となり、次々に新たな疑惑が浮上し、ヒール(悪役)と化した。2014年シーズンは全試合出場停止処分を受けている。
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