大谷翔平、山本由伸...日本人投手がメジャーで巨額契約を結べる理由 小林至が解説する「MLBとNPBの年俸格差」 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── MLBの球団は"資産"との考えで、投資家が転売すると聞いたことがあります。

小林 MLBの球団は、基本的に投資資産です。そして、その資産価値は猛烈に上がっています。雑誌『Forbes』によれば、ドジャースの資産価値は約6700億円と試算されています。ドジャースは2012年にオーナーが代わっていますが、その時の買収価格が2800億円でしたので、資産価値は10年で2.8倍にはね上がりました。

 ソフトバンクが2004年にホークスを買収した際に支払った額が200億円でした。またDeNAが2011年にベイスターズを買収しましたが、あの時DeNAは株式の67%を取得するために65億円を支払いました。つまり球団の資産価値は約97億円だったということになります。もし阪神や巨人などの老舗名門球団が売りに出されたら、1000億円くらいの値段はつくと思うのですが、日本のプロ野球には価値を高めて転売するという考えはありませんから、現実には起こらないと考えたほうがいいでしょうね。

【数字的根拠が契約金に影響を及ぼす】

── ドジャースと大型契約を結んだ山本投手ですが、小林さんは活躍すると見ていますか。

小林 野茂英雄をはじめ、黒田博樹、ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平、千賀滉大と、メジャーでも結果を残した投手は落ちるボールを武器としていました。昨年メジャー1年目の千賀も"お化けフォーク"が威力を発揮し、12勝と実績を残しました。山本もスプリットという落ちるボールを得意としています。このボールをうまく使うことができれば、結果は残せると思います。

── 山本投手に関して、メジャーでまだ1球も投げていないのにこれだけの契約になった理由は何だと思いますか。

小林 日本人投手の評価が非常に高まっているということです。MLBのFAは希少価値のある商品を巡ってのオークションの仕組みと同じですから、獲得したければ他球団より高い金額を提示するしかありません。

 もうひとつ、25歳という年齢も価値を高めたと思います。ちなみに、25歳というのはMLBの制度のなかで重要な年齢です。2016年にMLBと選手会が結んだ新労使協定により、海外選手の獲得に伴う契約金制限の適用年齢が、23歳未満から25歳未満に引き上げられました。25歳未満の選手との契約に使える金額は制限され、マイナー契約からスタートします。大谷が23歳でエンゼルスに入団した際はまさにそうで、契約金3億2400万円、年俸7630万円でした。一方、山本はそのルールが適用されなくなる年齢に達しての渡米です。

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