大谷翔平、山本由伸...日本人投手がメジャーで巨額契約を結べる理由 小林至が解説する「MLBとNPBの年俸格差」 (2ページ目)
── この差が、すなわち年俸の差になると。
小林 球団の"支払い能力"が全然違ってきます。NPBの一軍選手の平均年俸は1億円前後。それに対してメジャーの選手は平均年俸6億円程度。NPBで1億円を超えている日本人選手は100人程度ですが、メジャー契約している選手の最低年俸は1億円です。単純計算すると、メジャー契約をしている選手は1チーム40人、それが30球団あるので、1200人が年俸1億円を超えていることになります。
── それにしても今回の大谷選手の契約はすごいとしか言いようがありません。
小林 "二刀流"で投打ともに圧倒的なパフォーマンスを見せている大谷選手は、現役ではもちろん、歴史上でも比較対象がいない、まさに"ユニコーン"です。それだけの選手を獲得したければ、前代未聞の金額が必要だったということですが、MLBの年俸制度が実質、青天井の制度になっていることも要因として挙げられるでしょう。
ほかのアメリカのプロスポーツにはサラリーキャップなど、チームの年俸総額に厳しい規制を設けているのですが、MLBにはそれがない。年俸抑制策として、一定額を超えた場合は罰則金を支払う"贅沢税"という制度はありますが、今回の大谷選手のように後払いなら適用されません。
── そんな多額の年俸を放映権収入、入場料、スポンサー代、グッズ代などで回収できるものなのでしょうか?
小林 そもそもアメリカは、スポーツコンテンツにお金が回る仕組みができているのです。たとえば、アメリカでナンバーワン人気を誇るNFLの公式戦の数は1チーム17試合で、MLBの10分の1程度ですが、年商は倍の3兆円です。
またドジャースに限って言えば、地元の放送局と放映権料として2038年までの間、毎年3億3400万ドル(約484億円)の契約を結んでいます。長期にわたり安定した収入を得られることが、これだけの大型契約を後押ししているのかもしれないですね。
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