ヌートバーはなぜ日本人の心をつかめたのか? ポイントは「高校球児感」「泥臭さ」「笑顔」ジャーナリストが解説 (3ページ目)
●明るいムードをつくる「笑顔」
今回の侍ジャパンはチームの雰囲気が明るく、選手たちの笑顔が印象的だった。
「チームの中で最も笑顔を見せ、ムードメーカーとなっていたのがヌートバーでしょう。ペッパーミルパフォーマンスも含め、彼を見ているとこちらも楽しくなってくる。
この明るい雰囲気づくりが日本人は苦手なんですよね。言わなくても察する能力は高いのですが、その分表情に乏しい。
一方、メジャーリーグでは、選手の約4割がスペイン語圏の出身。クラブハウスでは英語に混じってスペイン語がよく飛び交っています。ヨーロッパ、アジアからも異なる言語や文化の選手が同じチームで野球をするわけです。
メキシコ戦の最終回で、ヒット後に塁上からベンチを鼓舞した大谷翔平しかり、身振り手振りでとにかく伝えるのが大事。言葉が通じない分、非言語も積極的に使いながら意思疎通をするのがメジャー流なんです。
こうした背景があって、ヌートバーのチームメイトへの好意、仲間意識が言葉以上に伝わったのでしょう」
一方、言語コミュニケーションも見逃せない。
「ヌートバーの言語コミュニケーションのすばらしさが詰め込まれたのが『君が代』。英語圏で育ったヌートバーにとって、日本の国歌を歌うのはたやすいことではありません。
『おはよう』『ごちそうさま』といったフレーズならば簡単に覚えられますが、『君が代』となると話は別。きっと時間をかけて練習をしたはず。こうした日本代表への思いがファンを虜にしたのでしょうね」
ヌートバーは今季、どんな活躍を見せるのか。期待せずにはいられない。
【プロフィール】
瀬戸口 仁 せとぐち・ひとし
スポーツジャーナリスト、「怒りマネジメント」ファシリテーター。スポーツ新聞社でプロ野球を11年間取材後、アメリカ・ニューヨークでメジャーリーグをはじめとした多くのアスリートを13年間取材。35年以上のジャーナリスト経験をもとにさまざまなテーマで、講演、セミナー、研修を全国で行なっている。
著者プロフィール
小林 悟 (こばやし・さとる)
フリーライター。1981年、福井県生まれ。週刊誌『サンデー毎日』(毎日新聞出版)、『週刊文春』(文藝春秋)、『集英社オンライン』(集英社)などで食や暮らし、スポーツにまつわる話題を中心に執筆。
3 / 3