WBCが世界的なイベントになるには? ヨーロッパ勢の躍進、トラッキングデータ...第5回大会が示した意義と可能性 (2ページ目)
3年後の2009年、第2回大会はインターネット中継の「MLB.TV」と契約し、日本の連覇をリアルタイムで喜んだ。渡英後は大好きな野球をなかなか見ることができなかったが、それでもインターネットの高速化とMLBのグローバル戦略は、英国在住の稀有な野球ファンに夢のような時間を届けてくれた。
時は流れて2019年6月、ロンドンでニューヨーク・ヤンキースとレッドソックスが欧州初となるMLBの公式戦で激突した。今年はセントルイス・カージナルスとシカゴ・カブスが4年ぶりの"ロンドン・シリーズ"を開催する予定だ。
こうした種をMLBは地道にまき、今回、イギリスはWBC初出場を果たした。晴れ舞台に立ったチームの顔ぶれを見ると、イギリス出身はわずか3人だった。この代表の構成について、マクファーソンはどう感じたのだろうか。
「イギリス出身の選手をもっと多く送り込めたら、たしかによかっただろう。でも我々の国で行なわれている野球のレベルを考えると、その可能性は現実的ではない。だから我々はイギリスにルーツを持ち、アメリカでプレーしている選手たちを必要としている。でもスコットランド代表では、サッカーでもラグビーでも母国生まれではない選手たちがたくさんプレーしているから、野球だけが珍しいわけではないんだ」
【2つの国で代表になれる可能性】
サッカーW杯やオリンピックというスポーツの主要な国際大会と異なり、世界的に見るとマイナーであるWBCは、代表チームに選出できる条件が"緩い"。顕著な例として、前回アメリカ代表として優勝したマーカス・ストローマンは今回、母親が出身のプエルトリコ代表を選んだ。2013年の第3回大会でドミニカ代表として優勝に貢献したペドロ・ストロップは、オランダ領キュラソー出身の父親を持つことから今回はオランダ代表でプレーしている。
侍ジャパンで言うと、ラーズ・ヌートバーがそうだ。日系アメリカ人の彼は日本人の母親を持つことから侍ジャパンに選出され、高い技術と闘志むき出しの姿勢で日本のファンを魅了した。そうしてチームのキーマンになると同時に、事あるごとに日本への感謝を口にした。
2 / 4