イチローが「孤独だった」と振り返った過去。チームメイトに誤解されても「負けるのはあり得ない」と貫いた信念 (2ページ目)
球団の殿堂に入るような元選手は、さらに言えばアメリカ野球殿堂に選ばれることも確実視されているような超大物は、のんびりと余生を過ごすのが普通だ。しかしイチローさんの場合、引退後も自分の時間と体を駆使して現役選手のよき練習相手であろうとする。痛めた肩をできるだけ早く治そうとするのも、練習相手としてマリナーズの若手たちからの要求に100%で応えるためだ。そしてその献身の対象は、日本の高校球児、女子選手たちにも広げられている。
チームメイトに誤解された過去
どんな状態にあっても、自分がやるべきことをやる。そんな姿勢は、マリナーズが低迷した2000年代中盤、「自分のことしか考えていない」と一部チームメイト、地元メディアに曲解されたこともあった。
ただイチローさんが特別だったのは、明らかに誤解されているような状況でも、一切の弁明をしなかったことだろう。SNSなど、自身の情報発信チャンネルを持たない。所属事務所や球団を通じて、反論するようなこともしない。イチローさんは、どんな時もただひたすら、行動でその意思を示そうとしていた。
マリナーズ殿堂入りは10人目。あの当時を振り返りつつ、長きにわたってチームに貢献した者に贈られる栄誉をいま、どんな思いで受け止めるのか。そんな記者の問いかけに、イチローさんはちょっと神妙になって言うのだった。
「心が折れそうになった時は何度もありました。でも、そこで踏ん張ってよかったと思います。そういうこと(誤解)に(僕が)負けるのはあり得ない。まあ大変だったけど、ダメなものはダメ、いいものはいい、と言ってしまう性格なので......。当時はチーム内でもいろいろありました。でもあの時はすごく孤独だったけど、向き合ってよかった。時間が経った時に、『あそこで負けちゃった』という後悔はしたくなかったですね」
2022年8月27日(現地時間)。ガーディアンズ戦ナイター前のTモバイル・パークでは、イチローさんの同球団殿堂入りセレモニーが盛大に行なわれた。
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