鈴木誠也の記録ラッシュに「歴史的デビュー」と地元メディアも大絶賛。適応の早さのカギは「見極め力」と分析 (3ページ目)

  • 澤良憲●取材・文 text by Sawa Yoshinori
  • photo by Kyodo News

打席内の落ち着きも高評価

 解説者で元カブスのマーク・デローサ氏は、鈴木の「プレート・ディシプリン」(投手の投球内容、打者の選球眼、積極性を測る統計データ)に注目した。それによれば、鈴木の「チェイス・レート」(振らなければボールと判定される球を振る確率)は、15打席で5.0%。一般的に、この数値が低いほうが優秀な打者とされる。

 比較対象としては、ナショナルズのフアン・ソト(9.1%)、ブリュワーズのクリスチャン・イエリッチ(11.1%)や、アンドリュー・マカッチェン(14.3%)のデータが紹介された。デローサ氏は、鈴木の数値は「サンプル数はまだ少ないが」と前置きしつつも、メジャーの好打者と比べても際立った数字に「本当に特別な選手だ」と絶賛した。

 さらに番組では、鈴木の打席内での姿勢にも注目していた。デローサ氏は、4月7日のブリュワーズ戦でのメジャー初打席の映像を見て、「彼は打席内で非常に落ち着いている」と驚嘆している。

 この打席で鈴木は、昨季のサイ・ヤング賞投手のコービン・バーンズ(ブリュワーズ)から四球を選んだ。それに対してデローサ氏は、「2回裏、ランナーが2塁。『早く(カブス本拠地の)リグレーのファンに好かれたい』という状況で、打者は『積極的にならなければ』と思うはずだ」と独自の見解を述べながらも、「鈴木はカウント1−2と追い込まれても低めの落ちる球に手を出さない。2−2となってからの高めのボール球もなぜか振らない。(カウント3−2での)最後のエグい外角へのカッターも、あのシチュエーションで振らなかった」と、鈴木の選球眼のよさと辛抱強さに感心した。

 話題は鈴木の構えにも移った。2打席連続本塁打を放った12日の第3打席での構えが、通常より体を捻っていて腕、手首、バットがより捕手側にあることを指摘。「彼の構えは打点を稼ぐ打者タイプにも見え、どの打順でも打てそうだ」と臨機応変に対応できる能力を評価した。最後には、カブスOBのアラミス・ラミレスを引き合いに出して、「(鈴木は)打席に立つたびに相手チームに脅威を与えるラミレスを思い起こさせる」と語り、「ただただ素晴らしい」とまとめた。

 鈴木の活躍は現地でも大きな話題となっているが、鈴木のメジャーキャリアは始まったばかり。前出の『スポルティングニュース』(13日付)では「長期的な活躍を見極めるには時期尚早」と、これから壁にぶつかる可能性も示唆されている。だが、持ち前の打力と、ストライクゾーンへの対応や「プレート・ディシプリン」が洗練されていけば、今後も活躍は続いていくだろう。

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