筒香嘉智がアメリカで感じた相手へのリスペクト。一流選手になるには人格者であるべきか、「スポーツマンシップ」を考える
日本のスポーツ界で近年、あらためて見直されているキーワードがある。
『スポーツマンシップ』だ。
「宣誓! 我々選手たちはスポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うことを誓います」
誰もがこのフレーズを一度は耳にしたことがあるだろうが、日本でスポーツマンシップの本質を教えられる機会は決して多くない。なぜ、大事なのだろうか。
そのヒントは、日本球界から世界に羽ばたいた男の言葉にある。
筒香嘉智がメジャーで感じた「スポーツマンシップ」とは?この記事に関連する写真を見る ピッツバーグ・パイレーツの筒香嘉智は2020年からメジャーリーグでプレーするようになり、あらためて超一流アスリートに共通する要素を感じたと言う。
「一般的にスーパースターと呼ばれているような、誰が見てもいい成績や数字を残している選手になればなるほど"人格者"が多いように感じます」
打席で放った鋭い当たりを好捕された直後、バッターがヘルメットをとって相手にリスペクトを示す場面が、アメリカで度々見られた。日本ではなかなか目にする光景ではなかったと、筒香は振り返る。
昨季ロサンゼルス・ドジャースのマイナーチームでプレーした際、監督やコーチが毎日のように選手たちに伝えることがあった。「対戦相手に敬意を払おう」。最初は驚いた筒香だが、「非常に大事なことを選手に伝えている」と感じるようになったと言う。
スポーツ界で時々議題に上がるのが、一流選手になるのに"人格者"である必要はあるのか、否かということだ。
取材者の肌感覚として、トッププレーヤーであればあるほど人としても優れたケースが多い一方、そうしたことを超越した"宇宙人系"もなかにはいる。極論を言えば、ハイパフォーマンスを発揮するのに"人格"は関係ないが、プレーのレベルや精度を高めていくうえでの考え方として関連しているように感じる。
この点に関し、千葉商科大学サービス創造学部の准教授で日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事は、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平を好例に挙げた。
「大谷選手は現代で二刀流を実現しているすごさがもちろんありますが、それ以上に、ゴミを拾うとか、笑顔を絶やさないとか、アメリカ文化にちゃんと溶け込もうとしている姿勢がリスペクトされています。昨年末の会見で『うまくいかないことがいっぱいありました』と話していましたが、それも含めて『楽しい1年だった』と。困難を含めて全部楽しむのは、スポーツマンシップをまさに体現しています」
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