菊池雄星と澤村拓一はもっと評価されるべき。斎藤隆が「隠れたすごさ」に着目

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

 数字だけを見れば、ふたりの日本人投手が今季のメジャーリーグで残している成績は、人目を引くものではないかもしれない。

 かたや、<28試合で7勝9敗、防御率4.32>。もうひとりは、<53試合で5勝1敗、防御率3.31>。シアトル・マリナーズに加入して3年目の菊池雄星と、今年からボストン・レッドソックスに移籍した澤村拓一である。

メジャー1年目から50試合以上に登板している澤村拓一メジャー1年目から50試合以上に登板している澤村拓一この記事に関連する写真を見る 元メジャーリーガーで解説者の斎藤隆氏は、今季の両者をこう評す。

「どうしてもシーズン"前半"という表現を使われてしまいますけど、今年の雄星はすばらしいですよ。後半になって悪くなったとは感じないですね。1年間、フルスロットルで行けるところまで行こうとしている気がします。

 一方、澤村のすごさも伝えたいですね。ただ体が強いだけではない、"強さ"を見せています」

 今季は大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の異次元の活躍にどうしても埋もれがちだが、菊池と澤村も高いパフォーマンスを見せている。

 30歳になった菊池は白星こそ恵まれていないものの、開幕からオールスターブレイクまで安定感のある投球を続けた。7月7日のニューヨーク・ヤンキース戦まで16試合に登板し、そのうち12試合で6イニング以上を投げ、クオリティスタートを11回達成した。

 過去2シーズンは防御率5点台に沈んだが、今季の変化を斎藤氏が解説する。

「ボールの質や変化量とか、そういうものではないと思います。ストライクゾーンの枠の中で勝負できるようになりました。とてもシンプルでありながら、メジャーで一流になるために一番必要なものです。

 四隅を狙い、際どいコースを『ボール』と言われて自滅していくピッチングを今年はやめたように感じます。バッターに対し、"やるか、やられるか"という勝負に変わった。そのなかで、もともと持っているボールがよかったことに自分で少しずつ気づいていったシーズンだと思います」

 今季序盤、これまでの投球と変わったのが、カットボールの割合を増やしたことだった。シーズン初勝利を挙げた4月29日のヒューストン・アストロズ戦では、全91球のうちフォーシームが約20%、スライダーが約22%で、カットボールは約50%だった。

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