イチローが「勝敗に関係なく打ちたかった」シアトル凱旋弾への想い (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

 去年、イチローが達成したメジャー3000本安打を記念して作られた、"2004年にシーズン最多記録となる262安打を打ったマリナーズのイチロー"と"2016年にメジャー通算3000本安打を打ったマーリンズのイチロー"が並ぶという、スペシャルなボブルヘッド人形は、シアトルのファンの心をわしづかみにした。いつもは20ドルの駐車場が休日価格の35ドルに設定されているというのに、午前9時半を過ぎたあたりから、クルマはひっきりなしに駐車場へなだれ込む。球場にあるいくつものゲートには、どこも長蛇の列ができていた。念願のボブルヘッド人形を手にしたファンは、誰もが満面の笑みを浮かべて、それぞれの座席へと向かった。

 イチロー@シアトル。

 今までと違うのは、イチローがメジャー3000本安打を達成した"レジェンド"であり、いつ引退してもおかしくない43歳のメジャー最年長選手として、シアトルに凱旋した、というところだ。

 イチローは、そんなファンの期待を超えてみせる。

 まずは"エリア51"と呼ばれたセーフコ・フィールドのライトを守った。打席に入るたびにスタンディング・オベーションを浴びた。第2打席ではレフト前ヒットを放って日米通算での安打記録を"4310"まで伸ばし、シアトルのファンの前で初めて世界新記録を更新してみせた。

 そして迎えた最後の打席。

 6点を追う9回表。

 マーリンズのユニフォームを着て、初めてのシアトル凱旋。

 自らのボブルヘッド人形が配られた、スペシャルな日。

 久しぶりにイチローを見たくて集まってくれた、たくさんのシアトルのファンの前。

 ──イチローがホームランを狙う要素は揃っていた。

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