球団史上初のFA選手獲得ゼロ。ヤンキースはケチになったのか?
1976年にメジャーリーグでフリーエージェント(FA)制度が導入されて以来、ニューヨーク・ヤンキースのジョージ・スタインブレナー・オーナーは札束攻勢で、毎年大掛かりな戦力補強を行なってきました。「金は出すが口も出す」スタンスのワンマンオーナーが2010年に亡くなったあとも、息子が新オーナーとなってその伝統を受け継ぎ、ヤンキースはFA選手の獲得を積極的に進めてきたわけです。
FA制度を積極的に活用したジョージ・スタインブレナー・オーナー しかし今オフ、ヤンキースはメジャー30球団で唯一、FA選手の獲得がゼロでした。これは球団史上初のことで、まさに「ヤンキース歴代屈指の珍事」です。いったい、名門球団に何が起きたのか――。今回はヤンキースの思惑について説明しようと思います。
今回、ヤンキースがFA選手を獲得しなかったのは、ふたつの理由が挙げられます。まずひとつは、「ブライス・ハーパーを獲得するため」です。
2010年にワシントン・ナショナルズからドラフト1巡目・全体1位で指名されたハーパーは、2011年にわずか19歳6ヶ月でメジャーデビューを果たしました。その年のナ・リーグ新人王に輝き、昨シーズンは153試合に出場してナ・リーグ1位タイの42本塁打で初タイトルを獲得。打率.330(2位)・99打点(5位タイ)もさることながら、もっともすごかったのが「OPS」の数字です。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)