ついにワールドシリーズ。青木宣親、初の世界一なるか? (4ページ目)
そのスタイルを象徴している選手は、間違いなく2番バッターの青木宣親選手(打率.285・1本塁打・43打点)でしょう。青木選手が得点すれば、レギュラーシーズンでは40勝13敗、ポストシーズンでも5勝0敗と圧倒的な勝率を誇っています。ポストシーズン8試合の成績は、打率こそ.259ですが、ディビジョンシリーズでの出塁率は.385、リーグチャンピオンシップシリーズでは.429と、軒並み高い数値をマーク。2番バッターとして、テーブルセッター(お膳立て)の役割を十二分に果たしていると思います。
さらに、ロイヤルズが得点するためにもうひとつ欠かせない秘密兵器は、ふたりの代走要員でしょう。青木選手が出塁後によく代走として登場するジャロッド・ダイソン(打率.269・1本塁打・24打点)は、控え外野手でありながら、ア・リーグ3位の36盗塁をマークしました。ポストシーズンでは相手にマークされて1盗塁ですが、ダイソンが塁にいるだけでものすごいプレッシャーを与えています。そしてもうひとりは、テレンス・ゴアという23歳のルーキーです。レギュラーシーズンの成績は、わずか1打数0安打。しかし、大事なポストシーズンの25人のメンバーに大抜擢されると、5試合で3盗塁をマークしています。
得点力の低いロイヤルズにとって、こういう試合の流れを変える選手の存在は大きいでしょう。出塁率の高い青木選手がチームを引っ張り、小技の効く選手がグラウンドを駆け巡ることで、ヒットが生まれなくても得点を奪える攻撃ができるのです。
今年のワールドシリーズは、決して派手な試合展開にならないような気がします。しかしながら、ロイヤルズの地味な戦い方が機能したとき、29年ぶりの世界一はグッと近づくと思います。今シーズン、日本人選手として唯一ポストシーズンを戦っている青木選手は、悲願のチャンピオンリングを手にすることができるのでしょうか。ロイヤルズの攻撃を象徴している青木選手のバッティングは必見です。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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