お疲れ様でした。僕たちは永遠にD・ジーターを忘れない。 (2ページ目)
そしてもうひとつ、ジーターを語る上で欠かせないのは、デビューから現役を終える今シーズンまで、ショートのポジションひと筋だったことです。キャチャーを除いて最も難しいと言われているショートを、ジーターは20年間守り続けました。
体力的な衰えやライバルの出現などによって、スター遊撃手ですら他のポジションへの転向を余儀なくされるのがメジャーの世界です。20世紀初頭にナ・リーグの首位打者に8度輝き、史上最高の遊撃手との声も高いホーナス・ワグナー(1897年~1917年/元ピッツバーグ・パイレーツなど)しかり、メジャー通算512本塁打を放ったアーニー・バンクス(1953年~1971年/シカゴ・カブス)しかり、そして前人未到の2632試合連続出場を果たしたカル・リプケン・ジュニア(1981年~2001年/ボルチモア・オリオールズ)しかり、晩年の彼らはショートから他のポジションに転向しました。
しかし、ジーターはレギュラーシーズンだけでなく、ポストシーズンも含めて一度もショートのポジションを明け渡したことがありません。2004年にテキサス・レンジャーズからアレックス・ロドリゲスが移籍してきたときも、そのポジションを譲りませんでした。
さらに特筆すべきは、ジーターはレギュラーになってからずっと1番か2番を任され、打順を下げることがなかった点でしょう。彼の打撃面を評するときに最も有名なのは、「インサイド・アウト」という、たとえば右バッターなら内角のボールをライト方向に打ち返すバッティング技術です。ジーターは近年のメジャーリーガーで、「最もインサイド・アウトの秀でたバッター」だと思います。同世代でその技術レベルに達していたのは、今年1月に引退を表明したマイケル・ヤング(2000年~2013年)ぐらいではないでしょうか。ヤングはレンジャーズ時代に5年連続シーズン200安打をマークし、イチロー選手の好敵手と言われた右バッターです。
その高いインサイド・アウト技術があったから、ジーターは「最高の2番バッター」と評されたのだと思います。1番バッターが出塁したとき、ジーターはこれまで数え切れないぐらい何度もライト方向へのヒットエンドランを試みました。たとえセカンドゴロになっても、ランナーを進めることができるからです。この自己犠牲のチームバッティングこそ、ジーターの野球スタンスを表していると思います。ジーターは現在、メジャー歴代6位の通算3461安打を記録していますが、個人成績だけを追い求めていれば、もっと多くのヒットを打っていたことでしょう。
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