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「投球術を知っている」。ジーターが絶賛した田中将大の深み (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 3回までに田中が奪った三振は4つ。決め球はすべてスプリットだった。カウントボールでもスプリットを使いながら、ウイニングショットでも使った。この配球で打者は、余計に意識するようになった。そして4回からが田中の真骨頂。4番のシャーホルツに投じた5球は、田中が思い描く通りの結果となった。

 4球でカウント2-2としたのだが、そのうち3球がスプリットで、1球がカーブ。スプリットへの意識づけを終えると、5球目はアウトコースに93マイルのストレート。シャーホルツのバットはピクリとも動かず、球審がストライクのコールを言い終わらないうちにベンチへと引き下がっていった。まさに、田中が試合を支配した瞬間だった。

 田中のスプリットとスライダーは間違いなくウイニングショットである。しかし、この他にもストレート、ツーシーム、カーブ、カットボールと多彩な球種を扱う。カブス戦のようにすべての球種をうまく制球できれば、打者は混乱をきたし、狙い球を絞れなくなる。シャーホルツの三振がまさにそれで、ジーターが「投球術を知っている」というのもその部分である。

 デビュー戦から3試合連続して8奪三振以上は、1900年以降では2010年に全米をとどろかせたスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)以来、2人目の快挙となる。田中の株は上昇するばかりだが、本人に油断は一切ない。

「結果的にゼロに抑えることができましたけど、完璧ではありません。そこまで良かったのかなと思うと、どうなのかなというのもある。甘いボールもありましたし。もっと厳しく投げられないと。よりいいものを求めてやっていきたい」

 各球団とも、今は田中のピッチングを観察している段階に過ぎない。徹底的にデータを洗い出し、打者は対戦することでボールの軌道をインプットしようとしている。だがそれは、逆に言えば、打者への観察眼が鋭い田中にも当てはまること。田中が1年間をかけて適応しようとするメジャーでの投球に興味は尽きない。

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