【MLB】開幕直前。メジャー1年目の侍たち、それぞれの現在地 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 しかも、中島選手のライバルと目される選手たちは、オープン戦で軒並み好成績を残しています。まず、昨年ヒューストン・アストロズの遊撃手として97試合に出場し、16本塁打をマークしたジェド・ラウリーというスイッチヒッターは、オープン戦16試合で打率.310・3本塁打・13打点を記録。出塁率は4割以上、長打率も6割以上と、打撃面で猛アピールしています。さらに、控え遊撃手のアダム・ロサレスという選手も、20試合で打率.343・3本塁打・9打点と大当たり。先日、地元新聞は「中島をセカンドに転向か?」と報じましたが、ジェマイル・ウィークスという二塁手も打率.370・1本塁打・6打点と、中島選手のポジションと被る選手は、みんな調子がいいのです。

 もちろん、オープン戦の結果だけで、メルビン監督がすべてを判断するわけではありません。メジャー1年目ということも考慮してくれるでしょう。ライバルたちの守備は一流レベルではないので、中島選手が守備力をアピールできれば、レギュラーの座を掴み取ることはできると思います。一刻も早く、メルビン監督や首脳陣の気持ちに応えてもらいたいです。

 そして、野手でもうひとりのメジャー挑戦者、田中賢介選手は、残念ながらオープン戦で結果を残せず、3月21日にマイナー行きを通告されました。昨年、高い投手力と固い守備でワールドチャンピオンの栄光に輝いたジャイアンツは、内野のバックアップを厚くするため、田中選手を春季キャンプに招待。ブルース・ボウチー監督は「ユーティリティプレイヤーと期待している」と語り、田中選手も「ベン・ゾブリストのようになりたい」と意気込みを語っていました。ゾブリストとは、先日行なわれたWBCのアメリカ代表に選ばれ、現在タンパベイ・レイズに所属するメジャー最高のユーティリティプレイヤーです。

 しかし、複数のポジションでチャンスをもらうものの、セカンドで4個、ショートで2個、サードで1個と、計7個のエラーを記録。それが致命的となりました。中島選手と同様、田中選手も守備で苦戦しているようです。

 メジャー1年目の3人は、それぞれの新天地で自分のポジションを築こうと奮闘しています。語学や環境の違いなど苦労することは多いでしょうが、本来の実力を発揮すれば、決して超えられない壁ではないと思います。ぜひともそれらを乗り越えて、メジャーリーグの世界で成功してもらいたいです。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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