【MLB】開幕直前。メジャー1年目の侍たち、それぞれの現在地
オープン戦で順調な仕上がりを見せているシカゴ・カブスの藤川球児 現地時間の3月31日、ついにメジャーリーグが開幕します。2013年、どんな展開が待っているのか、今から興奮を抑えきれません。そしてこの時期、何より気になるのは、メジャーに初挑戦する日本人プレイヤーたちでしょう。シカゴ・カブスの藤川球児投手、オークランド・アスレチックスの中島裕之選手、そしてサンフランシスコ・ジャイアンツの田中賢介選手です。そこで今回は、オープン戦の結果を踏まえつつ、開幕直前の彼らの現状を紹介したいと思います。
まずは昨年12月2日、シカゴ・カブスと2年総額950万ドル(約7億8000万円)で契約した前阪神タイガースの藤川投手です。背番号11番を与えられた藤川投手に対し、キャンプ前、カブスのデール・スウェイム監督は「(藤川は)8回を投げることになる」と語り、中継ぎでの起用を明言しました。よってカブスのクローザーは、昨年同様、カルロス・マーモルが務める予定になっています。
ただ、マーモルはボールの威力こそあるものの、制球難で自滅するケースが多く、首脳陣から絶大なる信頼を置かれているわけではありません。実際にオープン戦では10試合に登板し、9イニング3分の2を投げて、与えたフォアボールは7個。奪った三振4個よりも多いフォアボールを記録しています。つまり、マーモルのコントロールの悪さは昨年と同じと言っていいでしょう。
対する藤川投手は、7試合の登板で7イニングを投げ、防御率2.57という好成績。さらに8個の奪三振に対してフォアボールは2個のみで、コントロールの良さもアピールできています。しかも、オープン戦最初の4試合は無失点、そして3月9日の試合では最速93マイル(時速150キロ)をマーク。藤川投手はメジャー1年目ながら、新しい環境に困惑することなく、順調に仕上がりつつあるようです。
このまま好調を維持していれば、藤川投手がカブスのクローザーに昇格する可能性も十分に考えられるでしょう。スウェイム監督は藤川投手の中継ぎ起用を明言しているものの、それはマーモルに対する敬意の表れです。いくら日本で結果を残していても、メジャー1年目の新人を開幕クローザーに指名するのは憚(はばか)られるので、実績あるマーモルに気を遣ったのだと思います。ただ、マーモルが開幕後、何度もセーブに失敗するようなことがあれば、立場は一気に逆転します。藤川投手がカブスの新守護神になる日も、遠い話ではないかもしれません。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)