【MLB】開幕直前。メジャー1年目の侍たち、それぞれの現在地 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 カブスのリリーフ陣を見ても、マーモルと藤川投手以外にクローザーを任せられる候補はそう多くいません。伝家の宝刀であるフォークボール、キレのあるカッター、そして勝負球としても問題ないツーシーム......、どれもメジャーで通用しています。現在のところ、オープン戦での内容は申し分ないと言えるでしょう。本拠地のシカゴは非常に寒いので、開幕直後は温暖なキャンプ地(アリゾナ)との環境の変化に慣れる必要があります。ただ、まずは中継ぎでメジャーの雰囲気に慣れてくれば、おのずと結果はついてくるはず。藤川選手が1年目からどれほどの活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみです。

 一方、野手としてメジャーに初挑戦するふたりの近況も紹介しましょう。昨年、ア・リーグ西地区で劇的な逆転優勝を演じたアスレチックスは、手薄な内野陣を埋めるべく、西武ライオンズの中島裕之選手と2年総額650万ドル(約5億5000万円)で契約を結びました。入団会見でボブ・メルビン監督は、「(中島を)レギュラー遊撃手として考えている」とコメント。ショートは中島選手本人にとっても慣れ親しんだポジションなので、両者の思惑が合致した形でキャンプを迎えました。

 しかし、オープン戦が始まると、中島選手の調子はいまいち良くありません。昨年まで6年間の平均で打率.310.・17本塁打をマークし、「強打の遊撃手」という触れ込みで入団したものの、オープン戦では16試合で打率.150と低迷。ヒットはわずか6本、長打も1本のみと、現在のところアスレチックス首脳陣の期待に応えられていません。まだ、メジャーリーガーの投球に慣れていないという印象です。

 ただ、バッティングに関しては、それほど心配していません。試合を重ねるごとに、おのずと良くなってくるのではないでしょうか。決して適応能力の低い選手ではないので、西武時代から得意とする「右打席からライト方向に打つバッティング」を、いずれ発揮してくれることでしょう。

 しかし、問題は守備です。メジャーでは、ショートというポジションに何より守備力を求めます。オープン戦の中島選手は、すでに4つのエラーを喫しています。本職のショートで「4つ」は、正直言って非常に印象が悪い。中島選手のプレイを見たボビー・バレンタイン(現NBCラジオ解説者)は、「ナカジマはランナーのスピードを学ぶ必要がある。そして天然芝の長さに対応しなければならない」と語っていました。

 西武時代の人工芝から、アスレチックスの本拠地『オー・ドットコー・コロシアム』の天然芝に慣れることは急務です。しかも、同じア・リーグ西地区のライバルの本拠地も、すべて天然芝。ニューヨーク・メッツに移籍した松井稼頭央選手や、ミネソタ・ツインズに入団した西岡剛選手など、メジャーに挑戦した日本人内野手は守備のまずさで最終的にポジションを奪われました。メジャーで生き残るためには、決して避けられない課題です。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る