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【MLB】ヤンキース、3年ぶりの世界一奪回へ。カギを握るのは「2番・イチロー」 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 一方、オリオールズがワイルドカードゲームを勝ち上がってきても、ヤンキースにとって厳しい戦いが待っています。今シーズンのオリオールズは接戦に強く、1点差ゲームの成績は29勝9敗。これはメジャーで1890年以来、最高の勝率なのです。さらに延長戦も16勝2敗で、最初2連敗したあと、16連勝でシーズンを終えています(延長戦16連勝は1949年以来、メジャー最長記録)。今シーズンのオリオールズは、「延長戦になれば勝てる」という自信に満ち溢れていると思います。

 これらの偉業は、強力なリリーフ陣のおかげです。クローザーにはリーグ最多51セーブを挙げたジム・ジョンソンが控えており、7回終了時でリードした試合の成績は74勝0敗。なんと勝率100%なのです。強力打線を誇るヤンキースですら、終盤で逆転するのは至難の業だと思います。

 ただオリオールズは、エース不在が弱点です。ふたケタ勝利を挙げたのは、元中日のチェン・ウェイン(12勝11敗・防御率4.02)ひとりだけ。しかも絶対的なエースというわけではなく、9月以降のチェンは0勝4敗、防御率も5点台。かなり不安定な状態でポストシーズンを迎えているのです。よってヤンキースは、レンジャーズと同様に、先発陣を攻略することがディビジョンシリーズ突破のカギとなるでしょう。

 ディビジョンシリーズを制することができれば、次はオークランド・アスレチックス対デトロイト・タイガースの勝者と、リーグチャンピオンシップを戦うことになります。今シーズンのアスレチックスの奇跡的な大逆転には、本当に驚かされました。6月30日時点では首位のレンジャーズに13ゲーム差も離されていたのに、シーズン後半戦をメジャートップの51勝25敗で勝ち進み、地区優勝を成し遂げたのです。この快進撃の立役者は、ア・リーグ2位の防御率3.48を記録した若い新人投手陣で間違いありません。

 左のトミー・ミローンと、右のジャロッド・パーカーの13勝を筆頭に、新人だけで54勝を挙げたのはメジャー新記録です。さらに、先発から外れていた左のブレット・アンダーソンもポストシーズンで復帰してきそうです。ミローンとアンダーソンの2枚の左投手は、ヤンキースにとって脅威です。さらに貧打だった打線も、オールスター後はヤンキースやレンジャーズをも上回る、メジャー最多の112本塁打を記録しています。このチームの潜在能力は、決して侮れません。

 しかし若手が多いため、経験の少なさは否めません。特に短期決戦のポストシーズンでは、経験豊富なヤンキースのほうが強さを発揮できるのではないでしょうか。また、アスレチックス打線は『マネーボール』戦術でボールを見極めようとするために三振が多いので、ヤンキース投手陣がいかにストライクを先行させるかもポイントになると思います。

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