【MLB】今季大ブレイク。ニュースターがタイトル奪取なるか?
一時は「MVP」の声も出て、一躍パイレーツのヒーローとなったアンドリュー・マカッチェン 2012年の個人タイトル争いも、いよいよ佳境に入ってきました。アメリカでは「ミゲル・カブレラの三冠王なるか」という話題に注目が集まっていますが、今シーズンのタイトル争いを見てみると、あまり日本で知られていない選手が何人も名を連ねているのです。そこで今回は、今年ブレイクした選手にスポットを当ててみたいと思います。
アンドリュー・マカッチェン
(ピッツバーグ・パイレーツ/外野手)
1992年の地区優勝を最後に、19年連続負け越しているピッツバーグ・パイレーツ。今シーズンも大きな期待は寄せられていませんでした。ところがフタを開けてみると、勝率5割どころか、シーズン前半戦を1位で折り返す快進撃。一時は「地区優勝するのでは」とも囁(ささや)かれました。
その原動力となったのが、25歳の外野手、アンドリュー・マカッチェンです。開幕からヒットを量産し、6月、そして7月と、2カ月連続して『ナ・リーグ月間MVP』に輝きました。8月1日時点ではメジャートップの打率.373、同じくトップの長打率.632という驚異的な数字をマーク。一躍、ナ・リーグのMVP候補に躍り出たのです。
マカッチェンは2005年、ドラフト1巡目全体11番でパイレーツに入団しました。その年のドラフトは「豊作」と言われており、ジャスティン・アップトン(1位/アリゾナ・ダイヤモンドバックス)、ライアン・ジマーマン(4位/ワシントン・ナショナルズ)、ライアン・ブラウン(5位/ミルウォーキー・ブルワーズ)、トロイ・トゥロウィツキー(7位/コロラド・ロッキーズ)、ジャコビー・エルズベリー(23位/ボストン・レッドソックス)など、オールスタープレイヤーを数多く輩出しています。
しかし、マカッチェンは身体が小さく、身長も約178センチ。高校時代から万能プレイヤーとして才能を評価されていましたが、サイズ的に高い評価を受けづらかったのです。2009年にメジャーデビューを果たすも、すぐに頭角を現したわけではなく、決して目立つ存在ではありませんでした。
それが今年、いきなりの大ブレイクです。不動の3番センターとして打線を牽引し、いまやパイレーツの看板選手となりました。現在、打率.336・30本塁打・93打点・190安打・19盗塁をマーク。打率.346でリーグ1位のメルキー・カブレラ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が薬物使用により首位打者の権利を放棄したため、リーグ3位のマカッチェンが初のタイトルを手にするかもしれません(2位は打率.333のバスター・ポージー)。意外な選手がいきなりタイトルホルダーになるのも、メジャーリーグの魅力だと思います。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)