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【MLB】ヤンキース、3年ぶりの世界一奪回へ。カギを握るのは「2番・イチロー」

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

イチローが初のワールドシリーズに行けるか否かは、自身の活躍にかかっているイチローが初のワールドシリーズに行けるか否かは、自身の活躍にかかっている いよいよ2012年のポストシーズンが始まります。ア・リーグではニューヨーク・ヤンキースが最終戦で地区優勝を決め、イチロー選手も11年前はテロで自粛したので初のシャンパンファイトに酔いしれました。しかし、ポストシーズンに駒を進めたア・リーグのチームは、どれも強豪ばかりです。はたしてヤンキースは、ワールドシリーズに進出することができるのでしょうか。まず、ヤンキースはディビジョンシリーズで、ワイルドカードゲームの勝者(テキサス・レンジャーズorボルチモア・オリオールズ)と対戦します。

 ア・リーグ随一の得点力を誇るレンジャーズの特徴は、集中打が多い点です。1イニングで5点以上奪った回数は、なんとメジャー最多の28回。一度爆発すると、止まらない打線なのです。よってヤンキースは、レンジャーズにビッグイニングを与えないことがポイントとなるでしょう。

 その強力打線の中でも特に注意すべき選手は、4番のエイドリアン・ベルトレ(打率.321・36本塁打・102打点)だと思います。昨年、今年と2年続けて9月の月間MVPに輝くなど、シーズン終盤に強さを発揮しています。昨年はディビジョンシリーズで3本塁打を記録しました。今年もプレイオフで大爆発する可能性は十分あり得ます。

 しかし、ヤンキースにとって幸いなのは、10月5日のワイルドカードゲームでダルビッシュ有投手(16勝9敗・防御率3.90)が先発予定なことです。もし、ダルビッシュ投手がオリオールズ戦で投げて勝ち上がれば、最短の中4日でも10月10日のディビジョンシリーズ第3戦まで投げられません。また、ディビジョンシリーズが最長の5試合目になっても、ダルビッシュ投手の登板チャンスはおそらくありません。今シーズン、ヤンキースはダルビッシュ投手と4月24日に一度しか対戦しておらず、その試合は8イニング3分の1で無失点・10奪三振と、完全に封じ込まれました。しかも、後半戦のダルビッシュ投手はさらに調子を上げています。よってディビジョンシリーズでダルビッシュ投手と2度も対戦となれば、ヤンキースは非常に苦しむでしょう。

 ただ、ヤンキースがダルビッシュ投手以上に警戒すべきなのは、上原浩治投手(37試合0勝0敗1S・防御率1.75)だと思います。9月以降、14試合連続無失点と、今の上原投手は絶好調なのです。また内容も良く、11イニング3分の2を投げて、打たれたヒットはわずかに2本。さらにフォアボール1個、19奪三振と、抜群の成績です。現在、レンジャーズのリリーフ陣の中で最も信頼の置ける投手でしょう。しかも上原投手は左打者に滅法強く、ほとんど打たれていません。これは左打者の多いヤンキースにとって、非常にやっかいな存在です。上原投手は短期決戦で最大の山場となる7~8回に登板してくるので、ヤンキースが勝つためには、それまでにリードすることが必須条件ではないでしょうか。

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著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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