5球団競合の155キロ右腕・由規が見せた"怪物らしからぬ素顔" 「もともと左利きなんです」「メンタルも強くないんです」
流しのブルペンキャッチャー回顧録
第13回 佐藤由規(元ヤクルトなど)
「成田(千葉)の唐川侑己、大阪桐蔭の中田翔、仙台育英(宮城)の佐藤由規(以下、由規)。この3人を比べて、『さあ、誰にすんねん?』と。今年はそういうドラフトですよ」
2007年の高校生ドラフトを簡潔にこう言いきったのは、中日の中田宗男スカウト部長(当時)だった。
高校生と大学・社会人に分かれて行なわれた2007年のドラフト。高校生では唐川に2球団(広島、ロッテ)、中田に4球団(オリックス、阪神、ソフトバンク、日本ハム)、そして由規には最多の5球団(ヤクルト、楽天、横浜、中日、巨人)が競合した。
西武は不正スカウト問題による制裁で高校生ドラフトの上位2選手の指名権を剥奪されていたため、1巡目の指名権を持つ11球団すべての指名が、この「高校ビッグ3」に集中したことになる。
そして、由規のクジを引き当てたのはヤクルトだった。
ちなみに、この年に指名された高校生39人は全員がプロ入りした。そのなかで、2026年現在もNPBで現役を続けているのは、唐川(ロッテ)、中村晃(ソフトバンク)、丸佳浩(広島−巨人)、岩嵜翔(ソフトバンク−中日−オリックス)、伊藤光(オリックス−DeNA−楽天)の5人だけ。それだけでも、プロの世界で生き残ることがいかに厳しいかがうかがえる。
2007年の甲子園で155キロをマークした仙台育英の佐藤由規 photo by Sportivaこの記事に関連する写真を見る
【「ガツーン!」と来る硬いストレート】
仙台育英のブルペンは、夕方になると西日がものすごくまぶしい。
最初に受けたのが菊田信之(駒沢大)で、その後も渡辺郁也(青山学院大)、佐藤世那(オリックス)......。もう何度もこのブルペンに入ったが、いつも晴天の放課後で、ちょうどその時間になると、投手が投げる方向の屋根の向こうへ太陽が沈んでいく。
それも、不思議と「右のオーバーハンド」ばかりだったから、ボールを持った右手がいちばん高く上がるあたりで、夕陽ともろにダブる。
「いやあ、見えない、見えない」
しゃがむ位置を微妙に左右へずらしたり、目の位置を思いきり低くしたり、いろいろ工夫するのだが、太陽光線のなかから140キロがぶっ飛んでくる感じは、いつまで経っても変わらなかった。ただ、その日は140キロどころか、150キロがぶっ飛んできた。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。




























