【高校野球】15歳でコーチ業をスタートさせた異色の指導者 帝京長岡・小野寺翔が語る仙台育英・須江航監督との"密な時間" (3ページ目)
試合前、帝京長岡のユニホームをまとった小野寺は甲子園の土を踏みしめ、各ポジションに散った選手たちにノックを打って回った。7分間のシートノックを感慨深い思いで見つめる人物がバックネット裏にいた。この日、テレビ中継の解説者として呼ばれていた須江である。
「教え子がプロ野球選手になって、一軍の試合に初めて出る時以上にうれしいですよ。彼なんかとくに、特殊な道のりで甲子園にたどり着きましたからね。中学生の頃は体が小さくて、野球はあまりうまくありませんでした。でも、彼が学生コーチをやってくれたおかげで、勝たせてもらえました。大学に進んでからは、大学野球部の学生コーチをやるのではなく、自分からいろんな場所へ学びを求めていった。そんな子が甲子園でノックを打つまでになったのですから」
シートノックを終えると、小野寺はすぐさまベンチ裏へと急ぎ、スーツに着替えて試合開始に備えた。
【選手の誰よりもいいバッティングをする】
しかし、帝京長岡にとって初の甲子園は、苦い結果になってしまった。序盤から選手の動きは硬く、失点を重ねる。攻撃面も攻めきれず、東北に1対5で屈した。
試合後、インタビュールームに現れた小野寺は、苦い表情でこう語っている。
「春ということもあって、なかなか思うようにいきませんでした。いろんな課題が見つかって、夏までにもっと成長していかないといけないと思わされました」
甲子園で過ごした1時間57分の感想を聞くと、小野寺はこう言った。
「話には聞いていたんです。『甲子園はあっという間に終わるぞ』って。本当に時間が過ぎるのが早かったですね」
そして、小野寺は自分自身に言い聞かせるようにこう続けた。
「でも、甲子園ってずっといたいところじゃないですか。今回は初めて出場できましたが、また戻ってこられる準備をして、次はもっと長く甲子園にいられるようにします」
ところで、高校野球のプレー経験がないことは、指導するうえでコンプレックスではないのか。最後に小野寺に尋ねると、意外な反応が返ってきた。
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