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【高校野球】「遅刻はよくあること」「僕たちは史上最弱」だった神村学園を、九州屈指の強豪に変えた小田監督の原点と信念 (3ページ目)

  • 沢井史●文 text by Fumi Sawai

「その言葉に、ものすごく腹が立ったんです。現地に着いてバスを降りたあと、『時間が遅れることはよくある』と言っていたけれど、それは当たり前ではないんだと。そんなことはあり得ないと、厳しく伝えました」

【鹿児島で応援されるチームをつくる】

 そこから掃除やあいさつ、整理整頓といった基本を徹底し、当たり前のことを当たり前にできるチームを目指すことにした。

「(学校創立者でもある)神村勲先生から、『鹿児島で応援されるチームをつくってくれ』と言われていたんです。『何年かかっても、甲子園に行けなくてもいいから』とも。まずは日常生活をきちんとすることが、応援されるチームに一歩でも二歩でも近づけると思ったんです」

 ただ、野球をするため、試合に勝つために来た選手のなかには、その取り組みに疑問を抱く者もいた。ある選手からは、「僕たちは勝てるようになるんですか」と問いかけられた。それでも小田監督は信念を曲げなかった。

「当たり前のこともやらずに結果が出ていないのに、俺にそんなことを聞くのは筋違いじゃないのかと。やって結果が出ないなら俺に言ってこい、とその選手に伝えたら、『じゃあやります』と。それがチームのスタートでした」

 するとチームは、直後の秋の県大会を制し、九州大会でもベスト4まで勝ち進んだ。わずか2カ月ほどで見違えるように変わったチームの姿に、指揮官は「選手たちが、やるべきことを素直にきちんと実行してくれたから」と手放しで喜んだ。

 とはいえ、九州はもちろん、鹿児島で勝つことが容易ではないことは常に覚悟してきた。鹿児島には、鹿児島実、樟南、鹿児島商などの古豪がひしめき、毎年上位に進出してくる。コーチ時代から感じてきた伝統校の存在の大きさを、大会のたびに痛感してきた。

「伝統校の力というか、圧力ですかね。試合前のノックから、その雰囲気に押されそうになることは今でもよくあります。中等部を指導していた頃も、鹿屋中央やれいめいといった中学野球の強豪校が県大会では常に上位にいて、勝つことに苦労しました。九州大会に出ても、各県の強豪校や伝統校ばかりで、勝つことは簡単ではありません」

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著者プロフィール

  • 沢井 史

    沢井 史 (さわい・ふみ)

    大阪市出身。関西のアマチュア野球を中心に取材活動を続けるスポーツライター。『ベースボールマガジン』『報知高校野球』などの雑誌や、『スポーツナビ』などのweb媒体にも寄稿。2022年7月には初の単著『絶対王者に挑む大阪の監督たち』(竹書房)を出版。共著としても8冊の書籍に寄稿している。

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