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【高校野球】「ただの勘違い野郎でした」 沖縄尚学150キロ左腕・末吉良丞が昨夏の甲子園V後に味わった"どん底" (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

【前に飛ばない真っすぐを目指している】

 ところが、2年春の選抜初戦(青森山田戦)では、最速145キロをマークしている。末吉は「自分でもびっくりしました」と振り返る。

 年間通していい状態をキープできない点は課題ながら、伸びしろとも言い換えられる。末吉はこんな展望を語った。

「前に飛ばない真っすぐを目指しています。ホームベース上でも打者のバットを押し込むような、力強い真っすぐ。今は軸が前にいかないよう、フォームを修正しているところです」

 思わぬ僥倖も転がり込んできた。昨秋の明治神宮大会で、九州地区代表の九州国際大付(福岡)が優勝。「神宮枠」がもたらされ、本来であれば出場は絶望的だった沖縄尚学に選抜切符が届いたのだ。末吉は「九国さんには感謝しかないです」と語る。

 インタビュー当日、シート打撃に登板した末吉は、チームメイトから何度も痛打を浴びて降板している。まだ本調子ではないのは明らかだった。

 練習終了後、沖縄尚学のグラウンドを辞去しようとすると、末吉が挨拶にきてくれた。傍らにいた比嘉監督が末吉に話しかけた。

「今のおまえはこんなもんだよな。騒がれすぎだよな?」

 すると、末吉は真顔で「はい」と答えた。比嘉監督に言わされた雰囲気はなく、本心のようだった。

 末吉の答えを受け、比嘉監督は「でも、おまえ」と言って、こう尋ねた。

「自分の可能性まで否定しちゃうわけ?」

 末吉はふっと微笑を漏らし、こう答えた。

「いえ、それは違います。こんなもんじゃないです」

 どこか吹っ切れた表情だった。また一段、階段を上りつつあることがうかがえた。

 春の選抜が開幕するのは、3月19日。稀代のサウスポー・末吉良丞はきっと、また新たな一面を見せてくれるはずだ。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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