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大阪桐蔭「藤浪世代」の大型左腕は社会人で覚醒 指名確実と言われ、ドラフト特番にも出演したが... (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 4年になると、春に3勝(3敗)、秋は4勝(1敗)をマーク。特に秋は、45回2/3を投げて防御率1.38、43奪三振という堂々たる成績を残し、ベストナインにも輝いた。

 これが春の活躍であれば、プロのスカウトの目にも留まっていたかもしれない。しかしドラフト候補の絞り込みが進む秋の時期だった。それでも、4年時の結果で自信を取り戻し、一度は遠のいたプロへの夢を再び抱きながら、社会人のホンダ鈴鹿へと進んだ。

「もちろん、ドラフト解禁となる2年後でのプロ入りを目標にしていました。澤ちゃん(澤田圭佑)が高校3年の夏を終えた時に、『いまプロに行けるとしても、藤浪(晋太郎)の2番手と言われて行くより、大学でエースになって、みんなに力を認められてから行きたい』って言ってたんです。そのとおり、立教大でエースになって、しっかり結果(東京六大学通算21勝)を残してプロへ行きましたよね。だから、藤浪が高卒、澤ちゃんが大卒で、自分は社会人からのプロ。そこだけを見ていました」

【充実の社会人野球1年目】

 1年目から主戦として起用され、社会人野球の最高峰の大会である都市対抗でも完封勝利を挙げるなど、計14イニングを無失点。上々の滑り出しを見せた。

 長身から投げ下ろすストレートは140キロ台半ばを計測し、キレも一段と増していた。そこにチェンジアップ、スライダー、スクリューを織り交ぜたコンビネーションで、社会人の舞台でも堂々たるピッチングを披露した。

 そんな教え子の活躍を、西谷もある時、耳にした。

「社会人1年目の6月に、ウチが中京大中京(愛知)と練習試合をしたんです。その時、顔なじみのプロのスカウトに会ったんですが、『昨日、平尾が投げた試合を見てきたけど、めちゃくちゃよかった。今年がドラフト解禁なら上位候補になりますよ』って絶賛してくれて。苦労してきたヤツなんで、社会人でいいスタートをきれて本当によかったな、とうれしくなってね。思わず本人に電話したのを覚えています」

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