【高校野球】甲子園に届かなかった球児たちの「もうひとつの夏」 リーガ・サマーキャンプの新しい可能性 (4ページ目)
リーグ戦で行なわれるリーガでは負けても次の試合があるものの、選手たちは常に全力を尽くした。上位2チームがエスコンでのファイナルに臨めるという設定もあるが、目の前の試合で勝利を求める姿勢は、リーグ戦でもトーナメント戦でも同じと選手たちは口をそろえた。
異なるのは、大会方式が起用法に与える影響だろう。トーナメントで「一戦必勝」(=負けられない)と臨むのか、リーグ戦で全選手に一定の出場機会を与えるのか、という差が大きいと感じられた。
リーガ・サマーキャンプは前提として、「教育の一環である」という点は既存の高校野球と変わらない。主催する一般社団法人「Japan Baseball Innovation」の阪長友仁代表はそう語る。
「リーガ・サマーキャンプは『教育の一環』という点を深く考えて、リーグ戦をはじめとする今の仕組みに至りました。人生は一度負けたら終わりのトーナメント戦ではなく、挫折と成功を繰り返しながら進んでいくリーグ戦だからです」
甲子園を頂点とする既存の高校野球は、学生に対する教育の一環でありながら、社会の中であまりにも存在が大きくなりすぎた。そのおかげで野球の魅力が広く伝わってきたのは事実だが、一方で多くの歪みも生まれている。
どうすれば、高校野球に携わる全選手を幸せにできるか。簡単ではないテーマだけに、あらためて問い直していく必要がある。その意味で、今年2回目の開催となったリーガ・サマーキャンプにはさまざまな示唆があった。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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