【高校野球】甲子園に届かなかった球児たちの「もうひとつの夏」 リーガ・サマーキャンプの新しい可能性 (3ページ目)
上の世界を見据える意味で、大きいのが木製バットを使用したことだった。那須が続ける。
「金属バットだと先っぽや根っこでも、外野を越えることがあります。ちょっと詰まっても、内野の後ろに落ちたりします。それが木製に変わると、内野フライになったり、ゴロになったり、そこの違いが大きいですね」
投手の濱岡も、対木製バットから重要な感覚を得られたと語る。
「バットの芯を外してファウルでカウントを稼いだり、フィールドに打たせれば球数を抑えてアウトが取れます。芯を外す重要性は、金属の時以上に感じました」
【教育の一環としてのリーガ・サマーキャンプ】
投手起用も、リーガが甲子園大会と顕著に異なる点のひとつだ。思想として全投手に一定の登板機会を与えることに加え、球数制限も設けられている。
・投球数は1日最大120球までとするが、120球に達した打者までは投げることができる
・投手の球数は、60球までなら連投可、80球まで→中1日、100球まで→中2日、100球以上→中3日の登板間隔を開ける。連投は連続する投球数が合計120球までで、連投最終日の球数で休養日を決める。やむを得ず制限を超えて投げる場合は、事前にコーディネーターがコミッショナーの承認を得ることとする
今夏の甲子園では1試合150球を超える投手も珍しくなかったが、リーガでの1試合最多投球数は濱岡の97球(7イニング)だった。
リーガ全体での最多投球数は、濱岡と長谷川結斗(函館大学付属有斗/北海道)の236球(濱岡は4試合、長谷川は5試合)。ともにプロ志望届を提出予定の2人はリーガの所属チームでエース格だったが、決して登板過多にはならなかった。
近年、肉体的に出来上がったプロ野球でも1試合で150球を投げる機会は滅多にない。「選手=資産」という考えが根本にあるからだろう。
それを成長途上の高校野球が、1試合の球数でプロを上回るのは育成の観点から考えても異常だ。負けたら終わりのトーナメント戦という構造からそうならざるを得ない側面が強く、高校球児の健康や将来を現状より重視するなら、大会主催者はもっと球数制限を厳格に設定する必要がある。
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