検索

【高校野球】甲子園に届かなかった球児たちの「もうひとつの夏」 リーガ・サマーキャンプの新しい可能性 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 リーガに参加したのはドラフト候補や、高校3年間で一度も公式戦に出場できなかった部員、指導者と方針が合わずに途中退部してクラブチームに所属する者、さらに軽度の知的障害を抱える選手を含め、顔ぶれは多岐にわたる。トーナメントのように負けたら終わりではないので、全員になるべく等しく出場機会が与えられる。

 既存の高校野球のように出場選手が固定されると、「野球がうまいか、否か」で選手間にヒエラルキーがつくられがちだが、リーグ戦はそうした状況を生みにくい。

 いじめや暴力、ハラスメントにつながる高校野球の構造として、寮生活の閉鎖性も指摘される。期間限定のリーガを同じ文脈で語ることはできないが、ひとつのホテルに全選手が滞在して親交を深めながら、スポーツマンシップ講習を受けて根本的な考え方から学んでいく。そうして相手チームの概念が変わったというのが、狭山ヶ丘(埼玉)の永野俊だ。

「これまでは相手を敵対視する感じでした。それがスポーツマンシップ講習を受けて、みんなの気持ちが少しずつ変わっていきました。チームが違っても、野球をやっている仲間として一緒に高め合っていきたいと思うようになりました」

【リーグ戦だから得られる試行錯誤】

 プロを目指す選手や、大学・社会人で野球を続けたいという選手たちにとって特に重要なのは、プレーヤーとして向上できる環境だ。

 ドラフト候補として注目される川和(神奈川)の左腕・濱岡蒼太は、普段と異なる捕手と組み新たな発見をできたと語る。

「川和ではストレートを高めに投げるけど、リーガで組んだ中村逢良(日体大荏原/東京)はけっこう低めに構えます。初めは高めに構えてほしいと思ったけど、中村のミットに向かって投げると低めにシューと伸びていき、軌道が少しイメージできるようになりました。球種がひとつ増えたような感覚です」

 身長190センチの両打ち遊撃手で、プロ志望届を提出した那須皓太朗(武田/広島)は、日々の試合こそがなによりもの成長機会になったと語る。

「トーナメントは負けたら終わり、特に夏は実力を出せなければ引退です。でもリーグ戦はその日できなくても次の試合ではやり方を変えて、結果を残そうと試行錯誤できます」

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る