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【夏の甲子園2025】春夏連覇を目指す横浜の秘密兵器、片山大輔が語る「ワンポイントリリーフ」の矜持 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 主役になりたい──腕に自信のある者ならば、誰もが抱く感情だろう。しかし、野球は同時にフィールドに立てる人数が9人までと決まっている。チームが勝つために自分にできる仕事を探し、とことん追求する。それができたからこそ、横浜は今春の選抜を制し、今夏も甲子園で勝ち進んでいるのだろう。

 強調しておきたいのは、片山は決して卑屈な感情でワンポイントリリーフをこなしているわけではないということだ。

 片山は不思議そうな表情で、こう語っている。

「何でかはわからないんですけど、自分がリリーフに成功した試合は、その直後に打線が点を取ってくれるんです。秋の健大高崎戦(関東大会決勝)もそうだったし、選抜の智辯和歌山戦(決勝)も、春の相洋戦(神奈川大会準決勝)も、夏の立花学園戦(神奈川大会準決勝)もそうでした」

 片山がリリーフに成功した試合は、打線が爆発する。この客観的な事実こそ、村田監督が片山をワンポイントとして重宝する要因だろう。

 最後に、愚問と思いつつも聞いてみた。「『他校ならエースなのに......』と思うことはないですか?」と。片山はフッと笑い、即答した。

「今の実力があるのは、横浜高校にいるからです。監督、コーチ、いろんな先生方や仲間たちに支えてもらって、今の自分がいます。もし、そんなことを言う人がいたとしても、『言わせておけ』と思っています」

 片山大輔、ワンポイントの矜持。

 甲子園のブルペンでも、ひっそりとドラマが展開されている。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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