【夏の甲子園2025】春夏連覇を目指す横浜の秘密兵器、片山大輔が語る「ワンポイントリリーフ」の矜持 (3ページ目)
どのようにして、気持ちを高めていくのか。そう尋ねると、片山は少し難そうな顔で考え込んだ。
「集中力って、自然と高まっていくものだと思うんです。人からつくられた集中は長く続かないと、村田監督から何回も言われていました。監督から『つくれ』と言われて、準備して、『そろそろかな......』と思う時には、もう自然と集中している。そんな感じです」
もちろん、公式戦で「ぶっつけ本番」というわけではない。練習試合では、さまざまなシチュエーションでテストされたという。
「バッターの途中で替わるパターンは、けっこうやってきました。あとはイニング途中もあれば、イニングの頭からいくことも。いろんな準備をしてきたので、公式戦でも特別に戸惑うことはないです」
ここで、どうしても気になっていたことを聞くことにした。「もっと長いイニングを投げたい」と思うことはないのか。
すると、片山は少し間を置いてから、静かに語り始めた。
「新チームになってすぐ、『自分が先発することはないな』と思いました。奥村と織田のふたりがいるので。それなら、自分の役割を見つけて、まっとうしようと思いました」
【コントロールもメンタルも奥村には勝てない】
片山は茨城県日立市出身で、中学は常陸太田シニアで活躍した。当然、強豪校から誘いを受けたが、片山は名門・横浜への進学を希望する。同校のOBであり、同じ左腕である杉山遥希(西武)に憧れたからだ。
「杉山さんのようなエースになって、甲子園で活躍したい」
入学当初は、そんな思いを胸に秘めていた。同期の左腕・奥村に対しては、「負けたくない」とライバル心を燃やした。だが、片山が1年時にケガをしたこともあり、差は開く一方だった。そして、上級生になるにつれ、片山の心境に変化が表れた。
「コントロールもメンタルも、奥村に勝てないことばかりでした。人間的にも実力的にも、真のエースにふさわしいのは奥村です。左ピッチャー同士で話すこともありますけど、吸収させてもらうのはいつも自分ばかりで。だから、自分は自分の役割で、力を発揮したいと思うようになったんです」
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