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【高校野球】女子マネージャーの涙の手紙が崩壊寸前のチームを救った 千葉商大付の復活ストーリー (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 一方、菅谷さんにはその言葉が深く刺さっていた。自分の胸の内に秘めていた思いを、まったく違う視点から次々と指摘され、頭のなかが混乱してしまった。どうしていいのかわからず、マネージャー室の電気を消し、小さくうずくまることしかできなかった。

「いま思っていること、言葉に書いてみな」

 鳥海さんがそう言って立ち去ると、菅谷さんにはさまざまな思いが込み上げてきた。

「私がチームを変えられるのかという疑問と、私がやらなきゃダメだよなという思いが混ざって、どうしたらいいかわからなくなって。だけど、本当にみんな頑張っているのに、練習試合で結果が出ていない姿を見ていてすごく悲しいというか、悔しくて。ここで自分が何か動いたら、その頑張りが報われるならやろうと。思っていることを全部書いて送りました」

 帰宅した鳥海さんが食事をしているとLINEが届いた。画像に写されたルーズリーフいっぱいに、選手たちへの思いがあふれていた。

 これからチームにどうなってほしいか。手書きの手紙には、菅谷さんの気持ちがこもっていた。鳥海さんはじっくり読みながら、涙が止まらなくなった。

「やっぱり、愛子ちゃんはこういう思いを持っている。この子がチームを変えるんだと思いました」

【新チーム結成後、公式戦初勝利】

 翌日、菅谷さんはチームの前で泣きながら手紙を読み上げた。その次の日、部員たちは全員、丸刈りで現われた。人が変わったかのように練習が引き締まり、4月5日、千葉商大付は春季大会予選で市川工業を下し、新チームになってから公式戦初勝利を挙げた。

 翌6日、光英VERITASに勝利すれば春季大会出場が決まるが、1回裏、いきなり5点を先行される。なんとか3アウトをとってベンチに帰ると、円陣の輪ができた。

「おまえら、絶対勝つぞ!」
「おお!」

 菅谷さんは選手たちの顔を見回すと、逆転できそうな予感が込み上げてきた。

 チームは3回に2点、4回に1点を奪って点差を縮めたが、7回に1点を追加される。しかし8、9回に3点ずつ奪い、見事な逆転勝利で春季大会出場を決めた。

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