「日本の宝」と呼ばれた筑波大投手・国本航河 不調とケガを乗り越えて目指すプロへのラストサマー (3ページ目)
翌日の合宿2日目、この日も国本は紅白戦で2イニングの登板機会を与えられていた。ところが、待ち受けていたのは、さらに過酷な試練だった。
1イニング目は二死を奪ったあと、四球と安打でピンチをつくり、榊原七斗(明治大3年)に左中間をライナーで破られる。2点適時三塁打となり、この時点で強制終了。さらに2イニング目は1四球を出した段階で、大学日本代表の森本吉謙コーチ(仙台大監督)がマウンドに向かった。結局、直後に安打を浴びたところで、この回も強制終了。前日から合わせて、国本は3イニングとも投げきることができなかった。
【もうやるしかない】
登板後、国本のもとを再び訪ねると、こんな内幕を明かしてくれた。
「状態がよくないのは周りが見てもわかったみたいで、森本さんからは『バランスが崩れているよ』『どこか痛いんじゃないのか?』と言われました。自分としては投げたい気持ちがあったので、お話しさせてもらったんですけど、『やめておいたほうがいい』ということで、ヒットを打たれたところで降板になりました」
右肩への不安から、腕を強く振ることに恐怖心が出るのだろうか。そう尋ねると、国本は首をひねってこう答えた。
「恐怖心というか、体の連動の問題だと思います。状態が悪いと、連動がスムーズにできなくなって、一気に崩れてしまう。でも、崩れて投げられないというのでは、ダメなんですけどね」
国本にとっては、屈辱のマウンドになった。その時点で選考結果は発表されていなかったが、もはや国本の代表落選は誰の目にも明らかだった。「悔しいですよね」と尋ねると、国本はやるせない思いを口にした。
「もちろん悔しいのと、自分のことを推薦してくれた川村(卓)監督、スタッフに申し訳ないという思いが強くあります」
今後については、プロ志望届を提出する意向を示している。ただし、強豪社会人チームからの誘いも受けており、条件面を含めて熟考することになりそうだ。
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