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「日本の宝」と呼ばれた筑波大投手・国本航河 不調とケガを乗り越えて目指すプロへのラストサマー (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 国本に何が起きていたのか。本人に尋ねてみると、国本は淡々と語り始めた。

「2年の秋はよかったんですけど、3年になってケガをして、なかなかうまくいかなくて......。肩、ヒジのコンディションがよくなかったんです。手術をするほどではなかったんですけど、思ったようなボールが投げられない時期が続きました。肩の関節はもともと柔らかくて、緩い感覚があって。ケガをしやすいので、いい状態をキープするにはどうすればいいのか、試行錯誤していました」

 大学4年になり、春季リーグ戦を戦うなかで「ある程度戻ってきた」という好感触があった。今春は6試合に登板して2勝0敗、防御率0.33(リーグ1位)をマークしている。6月21日からバッティングパレス相石スタジアム(神奈川県平塚市)で実施された大学日本代表候補選考合宿にも、国本は招集された。

【自分は何をしているんだろうな】

 ところが、合宿初日の紅白戦。平塚のマウンドに立った国本は、1年半前とは別人のようだった。ストレートも変化球も、抜けたようなボールが続く。国本は1イニングを投げる予定だったのだが、被安打3、与四球1、失点1となった段階で強制終了。球数を考慮され、二死しか奪えなかった。

 国本は登板後、「まったく思いどおりにいかないボールでした」と振り返っている。

「リーグ戦だと打ち損じてもらえることが多かったんですけど、代表候補クラスになると、しっかりとヒットを打たれると感じました」

 自身のストレートの感触を聞くと、国本は「棒球というか、いい時の真っすぐではなかったです」と明かした。

 リーグ戦が終わってから1カ月近く時間が経ち、再びコンディションを高めることに難儀した。国本は「準備はしてきたんですけど、いまいち調子が上がらなくて、難しかったです」と振り返った。

 自身へのふがいなさが募ったのか、国本はこんな心情も吐露している。

「こういう機会をいただいたのに、なかなかうまくいかなくて。自分は何をしているんだろうな、という思いがあります」

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