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冨重英二郎と三方陽登が雌伏の時を経てついに覚醒 控え選手がドラフト候補に上り詰めるまで (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 だが、冨重はこれまで華々しい実績を挙げてきたわけではない。東海大相模、国際武道大では控え投手。大学4年春の大学選手権では中継ぎで2試合に登板したものの、冨重は「大会前に体調を崩して、ピークではなかった」と振り返る。社会人のバイタルネットに入社して野球を続けたが、NPBへの夢を追いかけて独立リーグへとやってきた。

 冨重は充実感を口にする。

「昨年の10月は体重が78キロだったんですけど、今は体を鍛えて82キロまで増えました。体重が乗ってきた分、指先にも重さが伝わるようになって、今までより真っすぐで押せるようになってきました」

 大学時代にも最速149キロを計測し、周囲から潜在能力を評価されていた。だが、ひとり暮らしで自己管理が甘く、大事な試合に合わせて調整することが苦手だったという。現在は実家で暮らし、家族のサポートを受けながら肉体強化に励んでいる。

「大学の時は外食ばかりで、脂肪分ばかりとっていました。今は食事や睡眠に気を遣いながら生活しています。好きなお酒も抜いて我慢しています(笑)」

 24歳になる年に本格開花の兆しが見えることについて聞くと、冨重は淡々とこう答えた。

「今までやってきたことが、やっと形になってきたのかなと感じます」

栃木ゴールデンブレーブスの長距離砲・三方陽登 photo by Kikuchi Takahiro栃木ゴールデンブレーブスの長距離砲・三方陽登 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【大学2年夏に打者転向】

 この日のBCリーグ選抜は、晩成型の野手も登場している。

 試合前のBCリーグ選抜の打撃練習で、とてつもない打球を目撃した。身長190センチ、体重97キロの巨大な右打者が放った大飛球が、鎌ヶ谷スタジアムの左翼へとぐんぐん伸びていく。打球は左翼フェンスをはるかに越え、その先に張り巡らされた高いネットをも越えた。日本人離れした脅威の場外弾を放ったのは、三方陽登(みかた・はると)である。

「周りから『場外に行ったよ』と言われたんですけど、僕は打球を追ってなかったんで、わかんなかったです」

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