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【大学野球】ドラフト指名漏れから2年、真鍋慧の今 過去も未来も興味なし「もっとやります」に込めた思い (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 フォームは変わっても、内面はブレない。その言葉には、揺るぎない信念がこもっていた。

 大学で本格的に取り組み始めた中堅守備について聞いても、「自分のミスです」と反省を口にしつつ、こう続けた。

「こういう大事な試合でエラーしないように、もっと練習してできるようにしないと。チームにとっても自分にとっても、センターを守れたほうが幅は広がりますから。ファーストだけではダメだと思います」

 富山監督から「クビ宣告」を受けても、真鍋は意気消沈することなく前を向いていた。事実、翌日の2回戦も真鍋は中堅手として出場している。

【先輩のプロでの活躍に刺激】

 プロの世界に目を向けると、高校・大学を通じての先輩である渡部がセンセーショナルなデビューを飾っている。真鍋にとっても、刺激になっているのではないか。そう聞くと、真鍋は「ずっと結果をチェックしてます」と明かした。

「ほかの選手とは違うなと感じます。野球に対する意識の高い方だったので、すごく勉強になることばかりでした」

 ここまでの大学生活は順風満帆だったのか、それとも「こんなはずではなかった」という思いが強いのか。そう尋ねると、真鍋は少し考えてから短い言葉を発した。

「もっとやります」

 過去について尋ねた質問だったが、回答は現在を指していた。

 大学4年までにどんな選手になっていたいか。そう尋ねると、真鍋は「まったく考えていません」と即答した。

「このチームで日本一になることしか考えていません」

 過去にも未来にも興味はない。真鍋慧はただ今を見つめ、前進しようとしている。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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