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【選抜高校野球】低反発バット導入で変わるバント技術 「神技バント職人」たちの驚愕のアイデア (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 さすがは東海地区でジャイアントキリングを起こしてきた、くせ者揃いの至学館の9番打者。西川の話を聞きながら、そう思わずにはいられなかった。身長165センチの小兵は、中学時代からバント技術を磨いてきたという。

「中学1年までは『打てる』と思っていたんですけど、中学2年から打順が9番まで落ちて......。自分は足に自信があるので、『バントをやらないとまずいな』と練習を始めました。前まではサード方向へのバントが得意だったんですけど、今はプッシュバントが得意になりました。相手のポジショニングを見て、どちらにも転がす自信があります」

 至学館は初戦でエナジック・スポーツに敗れたものの、今後も東海地区で不気味な存在感を放ち続けそうだ。

【エナジック・宮城飛斗の驚きの発想】

 対するエナジック・スポーツにも、奇妙なバント職人がいる。背番号15をつけた左打者の宮城飛斗(ひっと)。昨秋の公式戦は5試合に出場し、5打席で5犠打を決めている。まさに「ピンチバンター」である。

 バントについて聞くと、宮城はこう豪語した。

「どんなに速いボールでも、簡単に(打球を)殺せる自信があります。ミスする感じはしないです」

 宮城は身長165センチ、体重71キロの小兵だ。昨秋はバントしかしていないため、九州大会決勝・沖縄尚学(沖縄)戦で代打起用された際には、沖縄尚学の三塁手が前進して強烈なチャージをかけてきた。

 すると、宮城は驚きのアイデアを思いつく。

「ホームベースに当てて、バウンドさせよう」

 ホームベースは硬いため、首尾よくボールを当てられれば高く弾むことになる。高く弾めば捕手や三塁手が捕球しても、送りバントは決められるという寸法だ。ただし、そんなことが現実に可能なのか、という疑問も残る。

 宮城は「練習でやってみたら、案外できたので」とサラリと口にしたが、まだ理解が追いつかない。実際に宮城はバントをしてホームベースに当てたうえで、三塁手に捕らせている。

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