【選抜高校野球】低反発バット導入で変わるバント技術 「神技バント職人」たちの驚愕のアイデア (2ページ目)
広島商では、1番から9番まで打順にかかわらず全員が送りバントを決められるよう、準備している。強打が武器の4番打者・名越貴徳(2年)は、「中学では1回もバントをしたことがなかったんです」と明かす。
「チームが全国制覇するために、バントを練習するようになりました。ヘッドを下げずに立たせて、右手を押し込む(名越は右打者)イメージです。荒谷(忠勝)監督から『新基準バットは押し込みが弱いとファウルになるから、引くんじゃなくてしっかり押せ』と言われていました。練習では剣道の小手をつけて、みんな練習しています」
新基準バット導入は、バントをお家芸にする広島商にとっては追い風なのではないか。主将を務める西村銀士に聞くと、こんな反応が返ってきた。
「うまくコースに転がせばヒットになりますし、広商はバントによってチャンスをつくれるチームなので。それはチーム全体でも感じています」
ただし、ほかのチームに話を聞くと、「新基準バットでも従来のバットと技術的には変わらない」という声も多かった。これはチームや個人によって、感覚の違いがあるのかもしれない。
至学館の9番打者・西川一咲 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
【わざとファウルにする真意】
ここからは大会中に見つけた「神技バント職人」の技術を紹介していこう。
至学館(愛知)の9番打者・西川一咲(いっさ/2年)は、3月21日のエナジック・スポーツ(沖縄)戦でこんなセーフティーバントを見せた。
初球を三塁側に転がし、ファウルに。すると続く球に対してもバントの構えを見せ、今度は一塁側に転がしたのだ。ちょうど一塁手と投手の間に転がる、絶妙な位置。間一髪アウトになったものの、相手守備陣に揺さぶりをかけるじつに嫌らしいバントだった。
試合後に西川に話を聞くと、「ちょっと勢いが弱かったですね」と反省の弁を口にしながら、こんな裏話を明かしてくれた。
「1球目のファウルはわざとです。あえて外してサードに意識させておいて、セカンド方向にバントすると決まりやすくなるので」
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