無名のエースが夏に覚醒し甲子園、そして中日から6位指名 指揮官が振り返る聖カタリナ・有馬恵叶の奇跡 (4ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

 甲子園出場は果たしたものの、チームには課題が山積している。不祥事の余波もあり、現在、2年生はひとりだけ。1年生も15人しかいない。紅白戦などの実戦練習もままならない状態だ。

「3年生がいた時は、選手に寄り添う形でチームづくりをしていましたが、今は部員が少ない。4月になれば新入生が入ってきますが、本当にイチからのスタートになります。これまでとは違う厳しさを持って、選手を鍛えていくつもりです」

 そのために必要なことは、細やかなコミュニケーションだ。

「昔のように、選手を立場で服従させることはできません。大事なものは、やっぱり言葉だと思います。相手の意見を聞いて、感情的になったら負け。自分の考えや思いを言葉にして、しっかり伝えることが必要ですよね。普段からそう心がけています。

「もちろん野球の技術を身につけ、うまくなるために練習するわけですが、甲子園はそのご褒美だと思います。まずは人間力をしっかり鍛えることが大事だと思っています。甲子園に出ても不祥事を起こしたら、まったく意味がありませんから」

 53歳の新米監督は、甲子園よりも先を見ていた。

著者プロフィール

  • 元永知宏

    元永知宏 (もとなが・ともひろ)

    1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長

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